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女子レスリング界に見られる新しい潮流

2013/9/21(土) 8:03配信

THE PAGE

伊調が感じた世界の変化

 女子レスリングが五輪の正式種目になって、もうすぐ10年になる。しかし日本人にとって、この競技を代表する顔といえば、アテネ五輪当時と同じ、今年の世界選手権でも優勝した吉田沙保里と伊調馨で変わらぬままだ。同じ選手が勝ち続けられるという現状は、彼女たちが特別であることをあらわすと同時に、発展途上にある女子競技の成長が停滞していることも示しているのではないかと言われてきた。

 しかし、3つの五輪を経験したいま、ようやく新しい流れを思わせる出来事があった。
 「凄いです。尊敬します。あの身体能力はすごいです。あのバネはすごいです。タックルがバネックルだった。持って生まれものですよね」

 普段、あまり感情をあらわにしない今大会の金メダリスト、伊調馨が興奮気味に振り返ったのは、久しぶりに試合で3点を奪われた相手、コロンビアのレンテリアについてだった。伊調が「試合の内容は負けていた」と言いながら、そういった選手と出会えたことを喜ぶには理由がある。

 北京五輪以後の伊調は、メダルを目指して競技を続けるのではなく、競技そのものを深く追求することの延長として世界選手権や五輪へ足を運んできた。その彼女にとって、研究サンプルは多いほど楽しいし、予想外の特徴をもった選手が存在することは歓迎こそすれ、忌避するものではない。

 多彩なレスリングが実践されるか否かは、選手の身体の特徴だけでなく、基本的な考え方の違いも反映する。多種多様な文化を背景にもてば、編み出されるレスリングスタイルの違いも多くなる。
例えば、男子のフリースタイルをみると米国は突進力があるタックルを中心に攻撃し続けることを好むし、ロシアは密着してからのしつこさが身上だ。イランは勝利だけでなく雄々しさの表現にこだわるし、韓国は試合時間いっぱい動き続け、キューバはしなやかな身体に瞬発力を加えて絡みつくようだ。これらの国による特徴に、選手それぞれの個性が加わって、10人レスラーがいれば10通りのレスリングが見られるのだ。

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最終更新:2016/1/11(月) 4:10
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