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産業競争力強化法案って何?/国がM&Aを主導か

2013/10/18(金) 10:44配信

THE PAGE

 これからは自分が勤務している会社が生き残るのか、消滅してしまうのか、賃金がどうなるのかは、すべて公務員が決めてしまう時代になるかもしれません。成長戦略の目玉といわれている産業競争力強化法案はそのような内容を含んだ驚くべきものになっています。

 政府は10月15日、産業競争力法案を閣議決定しました。秋の臨時国会に提出される予定ですが、この法案の中核となっているのが政府主導による事業再編の推進です。法案では、政府(具体的には経済産業大臣)が「事業再編の実施に関する指針」を定めると記載されています。

「どの企業の生産性が低いか」政府が査定

 これはどういうことかというと、どの業種のどの企業の生産性が低いのか、あるいはどの企業が過剰な生産設備を保有しているのか政府が査定し、合理化の進め方を政府が決定するということを意味しています。さらに法案では、生産性や財務内容まで政府が目標値を作成するとも書かれています。つまり企業の利益をどの程度にすべきなのか、企業ではなく政府が目標値を定めるということになります。

 その目標値に達しない企業は、政府主導で半ば強制的にM&Aなどが行われ合理化が実施されることになります。冒頭で書いたように、自分が勤務する会社が存続できるのか、どこかに吸収されるのか、賃金がどの程度になるのかは、経済産業省の公務員によって決定されてしまうわけです。

 日本企業の多くがいまだに過剰な設備を抱え、自らの意思でリストラが実行できていないというのは厳然たる事実です。政府(経済産業省)はこれまで、非公式な形で数多くの業界再編を打診してきましたが、企業側の抵抗によってほとんど実現しませんでした。経済産業省はこの状況に業を煮やし、半ば強制的に再編を実施し、産業の活性化を実現しようとしているわけです。

戦時中の国家総動員法以来の出来事

 しかし、行政指導の域を超えて法律で政府主導の再編を実施するというのは異例のことであり、全業種にまたがる国家主導の業界再編という意味では、戦時中の国家総動員法以来の出来事といってよいかもしれません。

 民間企業の活動に対してここまで政府が過剰介入することについては、おそらく多くの反対意見が出てくると予想されます。また実際に政府が業界再編に介入するといっても、実施はそう容易ではなく、施行後に強制的な業界再編が一気に行われる可能性はそれほど高くないと思われます。しかし法律に政府主導の業界再編実施を明記することの意味は重く、今後の日本経済に極めて大きな影響を与えることは間違いありません。

 日本の産業界が自律的に業界再編を実施できないのは、その構造に何らかの欠陥を抱えているからです。その根本原因を取り除くことなく、国家権力によってとりあえず再編を実施してしまおうというこの解決策は、後に大きな弊害をもたらす可能性があるのです。


(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2015/1/19(月) 4:17
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