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「トリウム原発」という第3の選択肢は、原子力政策を変えるか

2013/11/5(火) 12:05配信

THE PAGE

 小泉元首相による脱原発宣言によって、再び原発の是非をめぐる議論が活発になっています。原発に関する議論の多くは原発推進か脱原発の二者択一なのですが、第三の道を模索する動きもあります。それはトリウムという元素を使ったより安全な原発を作るという選択です。

[図表] 原子力発電の割合はどれくらい?

 トリウムとはあまり聞き慣れない言葉ですが、ウランやプルトニウムなどと同様、原発の燃料となる物質です。ただウランやプルトニウムと比較すると、埋蔵量が多い、廃棄物が少ない、核兵器への転用が困難、安全性の高い原子炉を作りやすい、といった特徴があります。このため次世代の原発として技術開発を進めようという動きが国際的に高まっているのです。

 今年の6月にはトリウムによる原子力開発を提唱している川勝平太静岡県知事が二度目の当選を果たしており、中部電力では基礎的な研究が進められています。またノルウェーは英国と協力してトリウム燃料を炉の中で燃やす実験を今年の夏から開始しました。このほか、米国や中国などでも基礎研究が始まっていますし、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏も、トリウム原発の技術を開発するベンチャー企業に出資して話題となりました。

メルトダウンが起こりにくい

 夢の新技術のように見えるトリウム原発ですが、実は新しい技術ではありません。現在の原子力技術が開発された1960年代からすでにトリウムを使った原子炉は提唱されており、日本でも京都大学などが研究を続けてきました。しかしトリウムを使った原子力技術は、結局のところほとんど普及しませんでした。その最大の理由は、技術的な課題が克服できなかったことに加え、核兵器への転用が難しいというその本質的特性にあるといってよいでしょう。

 現在では核兵器の技術はすっかりコモディティ化され、北朝鮮ですら核ミサイルを保有できる時代になりました。しかし当時は、核兵器への転用が容易な現在の原子力技術は、核戦略上の理由から必要不可欠とされ、研究が最優先されたのです。またウランを使った現在の原子力技術は規模のメリットを追求しやすく、圧倒的にコストパフォーマンスが高いという事実も見逃せません。

 しかし福島原発が大事故を起こし原発の危険性に注目が集まったことや、イランや北朝鮮など途上国の核開発問題がクローズアップされたことなどによって、核兵器への転用が難しく、炉心溶融(メルトダウン)が起こりにくいなど、より安全なトリウム原発に、再び注目が集まっているというわけです。

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最終更新:2016/1/26(火) 4:33
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