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所得税、上限2億円にしたら金持ち外国人は日本に集まるか?

2014/3/19(水) 12:00配信

THE PAGE

 政府・与党が、海外から富裕層を呼び込むため、所得税の納税額について2億円という上限を設定することについて検討中と報じられています。一部からは金持ち優遇策であると批判の声も出ているようですが、この措置はどう考えればよいのでしょうか?

 現在、日本の所得税は累進課税といって、所得が多い人ほど高い割合の所得税を課せられる仕組みになっています。所得税の最高税率は40%となっており、高額所得者は場合によっては年収の半分近くの金額を税金として支払わなければなりません。実際には各種の控除があるため税率はもう少し低くなります。例えば、年収2000万円の人であれば、人によって異なりますが、おおよそ十数%の所得税がかかっています。

 一方、年収300万円の人は、ほとんどが2%程度しか課税されておらず、実質的に無税に近い状況となります。年収600万円でも状況は大きく変わらずせいぜい数%といったところです。源泉徴収の対象となる給与所得者のうち年収が1000万円を超える人は全体のわずか約4%ですが、その人達が支払う所得税は全体の50%近くを占めています。全体の4%に過ぎない高額所得者が、全体の半分の税金を支払っている計算になりますから、確かに日本は、お金持ちからたくさん税金を取る国と考えてよいでしょう。これが米国や欧州になると、年収300万円の人にもしっかりと税金が課せられてしまいます。

 今回の措置は納める税額の上限が2億円(年収ではありません)ということですから、想定される年収は5億円以上となります。日本では年収が1億円を超える人はわずか1万人程度しか存在せず、しかも、こうした高額所得者は給与所得以外の所得が多いという特徴があります。したがって、実際の所得税額が2億円を超える人は、さらに少なくなると考えてよいでしょう。

 また現実問題として所得税の額に上限が設定されたからといって海外の富裕層が日本にやってくるのかというとそんなことはありません。米国は日本並みに税金が高い国ですが、世界から富裕層が集まっています。富裕層は、市場の透明性や公平性、政府の規制の少なさなどを重視しており、多少税率が低いからといって簡単にお金を移動したりはしません。日本はこの点で決定的に不利であり、税率だけで勝負するのであれば、シンガポールのように大幅に所得税を引き下げないと効果はないでしょう。

 海外富裕層の獲得にそれほど寄与しないにも関わらず、こうした制度が検討される背景には、成長戦略のひとつである海外資金の呼び込みがあまりうまくいっていないことへの対策があります。とりあえず所得税額の上限を設定すれば、何億円もの所得のある外国人は、見かけ上、日本に来やすくなります。一方、国内でこの条件が適用される人はほとんどいませんから、この措置を実施しても日本の税収の低下にはつながりません。実質的な効果はともかくとして、富裕層呼び込み策を提唱したという一種のアリバイにはなるわけです。

(大和田 崇/The Capital Tribune Japan編集長)

最終更新:2015/11/19(木) 4:47
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