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東芝情報流出、技術者の待遇が良ければ情報は漏えいしないのか?

2014/3/21(金) 10:00配信

THE PAGE

 東芝と提携関係にある企業の技術者が、韓国企業に半導体データを不正に提供したとして、この技術者が逮捕される事件が発生しました。こうした技術情報の漏洩に対して日本企業はどう対処すればよいのでしょうか?

 この事件の発生を受けて茂木経済産業大臣は、法整備を含め政府として対策を強化する方針を明らかにしました。日本の情報漏洩に対する罰則(懲役)は国際的に見てもかなり厳しい方ですが、罰金については、上限が1000万円となっており、上限が設定されていない米国やドイツよりも甘いといわれています。法改正ということになった場合には、これを無制限に引き上げるといった措置が考えられます。

 罰金を引き上げればそれなりの抑止効果が働くことが予想されますが、一介のサラリーマンに支払える罰金の額はたかが知れています。上限をなくしたとしても、現実には支払い能力がなく罰金が全額適用される可能性は低いと考えられます。盗む方は、罰金が安く、自分で支払いが可能なので犯罪に踏み切るといった算段はしませんから、罰則の引き上げが技術漏洩を防ぐ決定的な要因にはなりにくいでしょう。

 今回逮捕された容疑者は待遇に不満を持っていたという報道もあります。技術者の待遇向上もひとつの方法ではありますが、待遇に不満を持つ人はどんな条件でも存在するという事実を考えると、こちらも決定打にはならないでしょう。今回技術を漏洩した技術者は東芝のパートナー企業の従業員なのですが、このパートナー企業は日本企業ではなく米国企業です。また技術が漏れた先も、部分的には東芝の競合ですが、部分的にはパートナーという複雑な関係にあります。現代は様々な国籍の企業が複合的にパートナーシップを組む時代ですから、情報の管理はより難しくなり、待遇面でも様々な人が混在することになります。待遇の向上で流出を防ぐというのはそう単純なことではありません。

 企業ごとのセキュリティ強化や法整備はもちろん重要です。しかし、技術漏洩を防ぐ根本的な方法としては、非常に歯がゆい話ですが、日本が高い技術的優位性を常に保ち続けることしかありません。かつて日本の半導体産業が世界でダントツのトップであった時代には、日本の半導体技術者が週末に韓国に渡り、報酬をもらって技術指導(実際には技術流出)することが半ば黙認されていました。その理由は、日本の技術水準が圧倒的に高く、次々と新技術を開発できたので、周回遅れの技術を他国に流してもほとんど影響がなかったからです。

 また最先端技術に取り組む技術者は、たとえ年収がそれほど多くなくても、仕事に対する満足度が非常に高いというのが一般的です。本当に高度な技術については、どんなに高額の報酬を提示されても、自分自身だけが取り扱いたいという、強い欲求が生まれるものなのです。このような技術者が、金銭目的で他国にそれを漏洩する可能性は限りなく低いと考えてよいでしょう。今よりも日本企業の優位性が高かった時代に、技術漏洩がそれほど問題視されなかった背景には、そのような理由があるのです。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/1/13(水) 3:36
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