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囲碁界一の負けず嫌いが強い理由 ──女流棋士・謝依旻に訪れた転機

2014/4/19(土) 7:00配信

THE PAGE

 謝は1989年生まれの24歳。台湾の郊外、苗栗市で生まれた。囲碁を始めたのは5歳のとき。囲碁を習うには物理的にも経済的にも恵まれているとは言えない環境だったが、父の熱心かつ厳しい指導で、急速に上達した。

「父は私の勉強のために、都心まで車で連れて行ってくれたり、強くなってからは、韓国や中国に勉強に行かせてくれたりなど、囲碁の教育にとても熱心でした。その反面、父自体はあまり囲碁がわからないので、結果でしか判断してもらえず、負けると怒られたり、叩かれたりしたこともたくさんありました」

 娘のためにたくさん勉強させてあげたい。ただそのためには費用がかかる。そこで父は台湾の企業家に謝の支援をお願いした。そしてここから謝に対する周りの期待はさらに大きくなる。

「周りの期待は原動力でもあると同時に、プレッシャーでもありました。子供の頃は結構周りの目を気にする子供だったので、ここで囲碁を辞めたら、応援している人たちの期待を裏切るんじゃないかと思って。一人で頑張るよりも、応援してくれる人がいるから頑張ろうという気持ちも大きかったです」

 そんな謝が一度だけ本気で囲碁を辞めたいと思ったことがある。9歳の時、当時の謝はすでに囲碁漬けの生活を送っていた。ところがある試合で、しばらく囲碁から離れていたという男の子に負けて愕然とした。自分はこんなに毎日囲碁をやっているのに、囲碁をしばらくやっていなかった人に負けるなんて……。

 車での帰り道、サービスエリアに寄ったところで父から「もう辞めるか?」と初めて聞かれた。謝の囲碁漬けの生活は本人だけでなく家族への負担も大きい。さらに周りからの期待もある。答えを出せない謝に父は「少し休むから、起きたら答えをくれ」と言って眠りについた。

「父が眠っている間、とにかく考えました。自分なりに結構頑張ってきたし、みんなの期待もあるので辞めるのは勇気がいるけど、今ならまだ他の道にも進めるかな、と思ったり。ただ自分から辞めます、という勇気はなくて、父に聞かれたら辞めるって言おうと思っていました」

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最終更新:2016/2/7(日) 3:55
THE PAGE

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