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再び貿易赤字が拡大した根本的な要因

2014/4/21(月) 20:00配信

THE PAGE

 さらに、もう1つの理由が、日本からの輸出が中国などのアジアへ多くなされるようになったことです。かつて日本の輸出金額が最大だったのは米国でしたが、現在では中国が若干ですが米国を上回るまでになっています。

 今でも、米国への輸出では自動車や電気製品といった最終財が輸出に占める割合は大きく、とくに自動車を含む輸送用機器が輸出の約4割を占めています(2013年)。ところが、中国への輸出では中間財が多いため、中国との取引が増大するとともに日本の輸出構造が変化してきたのです。そして、中国は日本からの中間財を利用して、欧米へ最終財を輸出しています。

 3月の貿易統計をみると、中国への輸出金額は対前年比プラス4.3%ですが、非鉄金属や半導体等電子部品はマイナスです。(また、輸入ではスマホなど通信機が引き続き増加しています。)

 主にこれら2つの理由により、円安が輸出量を増加させるという効果が出にくくなりました。さらに、かつては「米国がくしゃみをすると日本は風邪を引く」でしたが、今では中国を通じてEUや他の世界各国の需要動向から影響を受けるようになりました。

 実は日本から米国への輸出の数量は、2011、12年の円高時にもそれほど減少していませんでした。一方で、この時期に中国とEUへの輸出量は減少していました。すなわち、より重要だったのは円高ではなく、EU債務危機による海外需要の低迷だったのです。(ただし、韓国ウォン安の影響はあったと考えられます)

 今注目なのは中国経済のゆくえです。中国経済は今年も引き続き減速気味です(第1四半期GDPが前年比7.4%中国としては低水準)。その要因の1つに、今年に入って輸出額が前年比マイナスになるほど落ち込んでいることがあります。これがEUの景気低迷によるものなのか、中国経済の構造的な問題なのかで日本企業の対応は異なるでしょう。

 本日発表の貿易統計は、日本の貿易構造が複雑化していることを教えてくれます。(なお、貿易黒字か赤字かは問題ではないという議論はその通りですが、それは製造業から金融業への産業構造の転換などの話です。現在日本が抱えている問題は交易条件の悪化という、いわば悪い貿易赤字です)

(文責/釣 雅雄・岡山大学経済学部准教授)

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最終更新:2015/11/12(木) 4:38
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