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運航中止相次ぐLCC、なぜパイロットが不足するの?

2014/5/22(木) 7:00配信

THE PAGE

 格安航空会社(LCC)各社がパイロット不足から、一部の運航を中止するという事態になっています。パイロットはなぜ足りなくなっているのでしょうか。

 ANA傘下で成田を拠点に1日20便余りを運航するバニラエアは、6月に全体の2割にあたる150便の運航を取りやめる方針を固めました。関西国際空港を拠点とするピーチ・アビエーションも、機長の病気などにより、最大で約2000便の運航を中止する予定です。

 パイロットが不足した直接的な原因は、日本でもLCCが普及し始めたことで、パイロットに対する需要が急激に高まったからです。もともとパイロットの絶対数が少なかったところに、新しい航空会社が次々に参入したことから、人材の争奪戦になっているというわけです。

 しかし、その背後には日本特有の構造的な問題もあるようです。日本の航空政策は典型的なガラパゴスといわれています。最近になって日本でもようやくLCCが普及し始めましたが、北米や欧州、アジアなど他の地域でLCCの普及が始まったのは20年以上も前のことです。世界ではLCCの普及も手伝って、航空機の旅客輸送量は2倍から4倍に拡大しました。しかし日本だけは例外で、過去20年でほぼ横ばいという状態が続いていたのです。

 国内の旅客輸送量が伸びなかったのは、景気低迷が長引いていたことが最大の理由ですが、航空会社の新規参入を制限した政府の規制の影響を指摘する声もあります。新規参入が少ないことを前提に、国として積極的にパイロットの育成を行っておらず、ここにきてLCCの参入が相次いだことから、人手不足が一気に深刻化したというわけです。

 日本の大手航空会社はパイロットの多くを自社で養成しています。国内大手航空会社のパイロットの給料は国際的に見ても突出して高い水準で、年収2000万円以上をもらっている人がザラにいます。一方、LCCのパイロットは国際的にみて標準的な水準である数百万円ですので、大手からLCCに転職する人はめったにいません。日本にはパイロットを養成する本格的な学校は、これまで航空大学校しかありませんでしたから、パイロットの供給源は限定されています。また、海外のLCCではパイロットの派遣会社を使うことは常識ですが、日本にはその制度もありません。LCCにとっては、ごく限られた人材を採用するしかパイロットを確保する手段がないのです。

 一部の大学では、パイロット養成学科を設置するところが出てきており、航空大学校以外での本格的なパイロット養成が始まっています。また、自衛隊パイロットの転職を促す制度についても政府が検討を始めています。しかし、これらが具体的な成果を上げるまでにはもう少し時間がかかりますから、当分の間、パイロット不足は続くことになるでしょう。


(大和田 崇/The Capital Tribune Japan編集長)

最終更新:2015/10/20(火) 4:03
THE PAGE

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