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緊迫タイ情勢、どういうことなの?

2014/5/30(金) 6:00配信

THE PAGE

 政治の混乱が続くタイで、とうとう軍がクーデターを起こして全権を掌握するという事態になっています。タイでは誰と誰が対立しているのか見えにくいのですが、どのような状況になっているのでしょうか。

タクシン派と反タクシン派の対立

 タイでは、辞任したインラック前首相の兄で、現在は国外亡命中のタクシン元首相を中心とするグループと、官僚や軍を中心とする反タクシン・グループの権力闘争が長年続いています。タイでは日本と同じように、官僚の影響力が非常に強く、政府の規制に守られた大企業が大きな力を持っています。

 タクシン氏は新興実業家で巨万の富を持っています。同氏は2001年、莫大な資金を背景に首相に就任し、地方や低所得者に対するバラマキ政治を行う一方、大胆な規制緩和や外資への市場開放を実施するなど、いわゆる構造改革路線を進めてきました。少々乱暴ですが、タクシン氏は田中角栄元首相と小泉純一郎元首相を合わせたような人物なのです。

 このため、地方の農家や低所得者層、それに一部の実業家などからは絶大な支持を得る一方、既得権益を持つ官僚や大企業からは猛反発を受けています。タクシン氏には汚職容疑がかけられ、軍による事実上のクーデターで政権を追われており、現在は国外亡命中の身です。しかし、タクシン氏の人気は衰えず、妹のインラック氏が首相に就任するなど実質的にはタクシン政権が継続している状況だったわけです。

軍は「中立的な立場」でクーデター

 今回、軍は両派の対立がこれ以上長引くのは国益にならないという立場から、中立的な立場でクーデターを起こしたと主張しています。確かに両派の代表が拘束されるなど、表面的には中立なのですが、実質的にはタクシン派の影響力を低下させるためのクーデターだという見方が一般的です。

 タイでは今年7月に総選挙が予定されています。いくら政治面、経済面で官僚や大企業が影響力を持っているといっても、有権者数では、地方の農家や都市部の低所得者が圧倒的に上回ります。インラック政権は野党の反対を押し切り、かなりのバラマキ政治を行っていましたから、このままの状況が続くと、次の選挙においてもタクシン派がかなりの票を獲得すると予想されていました。

 軍は、官僚など既得権益を持ったエリート層の間接的な支持を得てクーデターを実施したと考えるべきでしょう。また軍の背後にはプミポン国王を中心とする王族も控えています。王族は政治的立場を超えて、タイの国民から絶大な人気がありますから、どちらかの勢力に加担していると受け取られるのは得策ではありません。また片方の勢力だけが強くなりすぎない方が自分達にとっても好都合なわけですから、今回のクーデターについては追認という立場です。

軍部の行動に否定的な若者も

 タイでは立憲君主制採用以後、12回も軍によるクーデターが発生しています。以前は、政治的混乱を収拾できるのであれば、軍による秩序回復もやむを得ないとする国民も多かったようですが、最近では、若者を中心にこうした軍部の行動に否定的な人も増えてきています。タイの政治的土壌も変化しつつあるようです。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2015/8/31(月) 4:57
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