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「残業代ゼロ」で得するのはだれ?

2014/6/3(火) 6:00配信

THE PAGE

 労働時間に関わらず賃金を一定にする、いわゆる「残業代ゼロ」政策の議論が本格化してきました。残業代ゼロで得するのはいったい誰になるのでしょうか?

 この政策は、ホワイトカラーエグゼンプションと呼ばれているものですが、これまで時間によって支払われていた賃金を、成果に応じたものに変えるという制度です。現在、法定労働時間を超えた仕事については残業代が支払われていますが、対象職種を決めるなどして、残業代を支払わないことを可能にしようというものです。現段階では「過半数組合を持つ企業に限定し、一定の責任と能力がある社員」「世界レベルの高度専門職」などの案が出ています。

 この制度が導入された場合、得をするのは、高い成果を短時間で上げていた人ということになります。これまでは、成果に関わらず、残業を多くこなした方が、より多くの給料をもらえるという状況でしたから、仕事が速い人も遅い人も皆、一律に残業していました。残業代が出ないということになると、仕事が速い人は、さっさと仕事を終わらせて帰宅する可能性が高くなります。このような人は、より充実した生活を送ることができるようになるでしょう。人事コンサルタントの城繁幸氏は、高度人材に限定するという条件付きではありますが「残業チキンレースにさよならできる」として、この議論を前向きに評価しています。

 逆にこの制度で損をする可能性が高いのは、仕事があまり速くなく、社内政治に弱いなどの理由で、仕事を押し付けられるタイプの人です。ただし、年収も高いのであれば、それだけの給料をもらっている以上、こうした事態にもすべて自己責任で対処すべきという考え方には一定の説得力があります。

 問題は、責任と能力があるとみなして、一般社員にも拡大してこの制度が適用された場合です。いわゆるブラック企業的な会社では、成果で評価するような仕事ではなく、単純に労働時間に比例するような仕事に対しても、こうしたルールを適用し、無制限に残業をさせる可能性があります。そうなってしまうと、得をするのは、その会社の経営者だけで、社員は皆、疲弊してしまうということにもなりかねません。

 あくまで一般論ですが、日本企業におけるホワイトカラーの生産性は諸外国に比べて低いといわれています。そもそも売上げが伸びないので生産性が上昇しないという事情もあるのですが、労働環境の影響も無視できません。つまり、1人で出来る仕事を2人でこなしていたり、時間内に終了するはずの仕事を無理に引き延ばしているわけです。高度人材に限った形であれば、残業代ゼロ政策は企業の生産性向上に効果があると考えてよいでしょう。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/2/21(日) 4:37
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