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年金財政見通し、30年後に給与の半分を維持できるか?

2014/6/5(木) 11:00配信

THE PAGE

 厚生労働省が長期的な年金の財政見通しを公表しました。経済が順調に推移すれば、30年後には現役社員の収入の50%程度の水準は維持できるとの内容ですが、果たして本当なのでしょうか?

 年金の給付水準を評価する指標の一つに、所得代替率というものがあります。これは、年金受給者の給付水準が、現役世代の収入の何%になるのかというものなのですが、現在は約63%となっています。現役世代の平均年収約420万円に対して、年金受給者は260万円もらっている計算になります。政府ではこの数値を50%以上に維持するという目標を掲げています。つまり、将来にわたって、現役世代の収入の50%以上の年金を確保しようということです。

 今回発表した見通しでは、日本経済の将来について8つのシナリオを立て、それぞれのシナリオごとに年金の維持可能性を検証しています。

 それによると、今から30年後の2043年に所得代替率50%以上を実現するためには、物価上昇率1.2%、実質賃金上昇率1.3%、年金の実質運用利回り3.0%(名目4.2%)という水準が必要であるとの結論になっています。問題はこの数字にどれほど実現可能性があるかという点です。

 というのも、この数字は2024年以降の前提条件であり、それより前は、物価上昇率2%程度を見込んでいるのです。現在、日銀は2%の物価目標を掲げていますが、実現できるかどうかは未確定な状態です。今のところ賃金の上昇は物価に追い付いていませんが、見通しでは、賃金は物価を上回ることが前提となっています。また年金運用の過去10年間の実績は名目3.3%ですから、想定されるレベルには達していません。

 日本は過去10年間、不況に苦しんでいましたし、年金の運用はリターンの高い株式へのシフトを進めることがほぼ決まっています。現在よりは状況が改善すると考えられますが、それでも、この前提条件を完全にクリアするのは難しそうです。

 またこの見通しには前提条件が付いています。それは高齢者と女性が本格的に社会参加するという点です。男性も女性も生涯にわたって仕事を持つことを前提として、初めてこの見通しが成立するわけです。

 一方、女性の社会進出がスムーズに進まず、経済の低成長が続くケースでは、2055年に年金の積立金がなくなり、所得代替率は37%程度まで下落するとしています。好景気がずっと続く保証はありませんから、場合によってはその程度まで給付水準が悪化する可能性があることも意識しておいた方がよいでしょう。

(大和田 崇/The Capital Tribune Japan編集長)

最終更新:2016/2/16(火) 3:01
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