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人間より快適?「クルマ任せ」ではない自動運転の未来

2014/6/22(日) 15:00配信

THE PAGE

前回までぶつからないブレーキについて解説してきた。ぶつからないブレーキの実現は「障害物を見つけ、判断し、操作する」という3つのステップをクルマが独自に制御しなくては成立しない。障害物をレーダーとカメラで見つけ、制御ソフトがその状況を判断して、状況に応じた最適な制動を行って車両の速度を落としたり、止めたりする仕組みだ。

先週の記事「ボルボに見るぶつからないクルマの仕組み」

詳細は先週の記事を参照していただきたいが、障害物の種別を特定して、クルマ、人、サイクリストといった対象別に回避行動を選択するためには、レーダーとカメラの両方を装備することが必須になる。それらのデバイスを持つことで見えてくる機能がレーダークルーズだ。しかしそのためには他にも必要な機能が色々ある。90年代から現在までに、そうした様々な機能が、その時々の様々な理由で徐々に盛り込まれてきた。それらの総称をバイ・ワイヤという言葉で一括りにしたい。主にブレーキとステアリングに使われる用語だが、少々拡大してクルマのあらゆる制御を配線(ワイヤ)を流れる電気とモーターによって行う仕組みのことと言うことも可能だと思う。

電制スロットルがあったから出来たこと

最近のクルマのほとんどはアクセルが電子制御になっている。これは昔の様にペダルを踏むとワイヤー(この場合、金属製のひもの方のワイヤーだ)がスロットルバルブを開く仕組みではなく、電気的に制御を行う仕組みだ。

アクセルペダルには踏み込み量と速度をチェックするセンサーがついていて、それらのセンサーがドライバーがクルマに求めている反応をチェックする。例えばゆっくりとアクセルペダルを踏み込んだ場合は「ギアを保ったままエンジンに頑張らせたい」と判断するし、速く踏み込んだ場合は「ギアを落としてでも最大限の加速を求めている」と判断する。ペダルの操作情報をコントロールユニットで翻訳し、そこで出された命令によってモーターがその仕事量を決める。

実はスロットルが電制になった一番大きな理由は、トラクションコントロールを採用するためだった。ドライバーのミスによって、路面とタイヤのキャパシティに対して、過大な操作がされた時、電制スロットルは出力を適正な範囲に制限する。これによってパワーのかけ過ぎによるスリップ事故を防ぐのだ。

つまり、従来は右足の力でひもを引っ張って物理的に開けていたスロットルバルブをモーターで駆動することによって、機械側が補正できるステップを織り込んだ仕組みがトラクションコントロールだ。スロットル関係では、バルブを持たないもっと複雑な仕組みもあるが、それを説明すると前置きだけで一回分になってしまうので残念だが今回は割愛する。

電制のためにはクルマのあちこちにセンサーを仕掛けなくてはならない。例えば前述のスリップを検知するためにはホイールの回転変化をチェックできるセンサーがついている。センサーからの情報をフィードバックさせることで、必要ならタイヤの能力を常にギリギリまで使って加速することができる。一時期はF1でも使われていた技術だ。

センサーを増やして行けばいくらでも制御の範囲を広げることができる。センサーだけでなくAI(自己学習機能)を盛り込んだものもある。例えば変速機だ。ドライバーのスタイルによって運転パターンが異なるから、そのクセを覚えて変速していくAI付き電制変速はもう珍しくない。

また電制スロットルには変わった二次利用法もある。エンジンの振動が室内に伝わることを防ぐためにエンジンマウントのゴムを柔らかくしておいて、エンジンマウントへの力のかかり具合を見ながら操作を緩和してスロットルをゆっくり開け、エンジンの位置決め不足よる嫌な反動を最小限に抑えるようなことまで行っている。

高性能車の一部では電制スロットルに連動して大加速時にダンパーの硬さを変えてリアの沈み込みを防ぐ仕組みもある。アイディアとお金があればできることは無限にあるのだ。そして、ひとつのデバイスの採用が、他のデバイスとシナジー効果を産み、できることがどんどん広がっているのが現代のカーエレクトロニクスなのだ。

さてこの電制スロットルがあれば、レーダーとカメラで得た情報を元に車間距離が開きそうになった時に加速することができ、エンジンブレーキの範囲で減速することも可能だ。スロットルだけで減速しきれなければ、シフトダウンもできる。そしてさらに本格的な減速なら、自動ブレーキの助けを借りられる。こうして加速も減速も停止も電制技術によって自由にできるようになった。つまり速度ゼロから、システムが想定した限界速度まで全速度域の自動追尾を達成したのである。

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最終更新:2016/2/12(金) 3:55
THE PAGE

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