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ブラジルのエース・ネイマールは、なぜ重圧に打ち勝てるのか

2014/7/3(木) 16:39配信

THE PAGE

ワールドカップは、特異な大会だ。出場チームの平均レベルは、欧州チャンピオンズリーグの方が上かもしれない。代表チームは練習時間が限られているから、戦術的革新も起こりにくい。しかし、他の大会では絶対に見られない特色がある。それは、選手一人ひとりが祖国の人々の熱い期待を担っており、すさまじい闘志で最後の最後まで戦い続けること。それが極上のドラマを生み、見る者の心を強く揺さぶる。

それだけに、選手にかかるプレッシャーも尋常ではない。それが地元開催のブラジルとなるとさらに大きなものとなる。初出場の若い選手は、いかに傑出した能力の持ち主であろうと、力を発揮できないことが多い。1982年大会では、21歳の若き天才マラドーナが厳しいマークに苛立ち、マーカーを蹴りつけて退場処分を受けた。2006年大会では、18歳のメッシ、21歳のクリスティアーノ・ロナウドがいずれも1得点と期待を裏切った。メッシは、前年度の世界最優秀選手として迎えた2010年大会でも無得点と、期待を裏切った。ところが、この大会で、22歳のネイマールは初出場でありながらここまで実力を発揮している。

決勝トーナメント1回戦のチリ戦は、90分を終えて1-1。延長でも決着がつかず、勝負はPK戦へ持ち越された。4人目を終えた時点で、両チームとも2人ずつ失敗して2-2。ブラジルの5人目は、若きブラジルのエースだ。この試合では、序盤からファウルを連発されて右膝の裏側と左太ももを痛め、それでも歯を食いしばってプレーを続けた。しかし、もしこのキックを外し、チリ選手が決めたら、ブラジルは開催国でありながらベスト16止まりという1950年大会の「マラカナンの悲劇」以上の悲劇を味わうことになる----。

巨大なプレッシャーが、その細い肩にのしかかる。いつも笑顔を浮かべているこの若者が、これほど険しい表情を見せたことはかつてなかった。それでも、意を決して走り出し、いつものように左へ回り込み……左サイドへしっかり決めた。その直後、チリの5人目ハラのキックがゴールポストを叩く。ブラジルが、辛うじて勝ち上がり、若者は感極まって涙を流した。

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最終更新:2015/8/20(木) 4:29
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