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なぜ今ベーシックインカムなのか 第1回:社会保障制度の“限界” 同志社大学・山森亮教授

2014/7/11(金) 15:37配信

THE PAGE

 改正生活保護法が今月1日施行された。このことを伝える共同通信の記事は見出しに「自立促し受給者削減」とある。同じ日の日経新聞の記事の見出しは「不正受給、罰金上げ」である。

 これらの記事から受ける印象は、生活保護法をめぐっては、不正受給が同法上もっとも大きな問題で、またそもそも受給者を削減することが重要であるかのようである。もちろんこれらの記事は、政府側の法改正の意図を伝えるという意味では、的を得たものである。厚生労働省の資料によれば「必要な人には確実に保護を実施するという基本的な考え方を維持しつつ、今後とも生活保護制度が国民の信頼に応えられるよう、就労による自律の促進、不正受給対策の強化、医療扶助の適正化等を行うための所要の措置を講ずる」とある。「維持される」考え方よりも新しく導入される措置に報道の焦点があたるのは自然なことだ。

■すくいきれていない現状

 とはいえ「必要な人には確実に保護を実施」できているのだろうか。「必要なのに保護を受けられていない人」と「必要でないのに不正に保護を受けている人」の割合はどちらが多いだろうか。何度か勤務先の大学で、このように学生に質問してみたことがある。いつも後者の方が多いと考える学生の方が多数であった。事実は異なる。捕捉率という数値がある。生活保護基準以下の所得で生活している人のうち、実際に生活保護を受けている人の割合の数値である。イギリス(の生活保護に相当する制度)では90%前後であるが、日本では厚生労働省が2010年前に公表した数値では、15.3%と見積もられている。

 もっともこの数値は、その人の持つ資産など生活保護受給の所得以外の要件を計算に組み込んでいないので、一概に受給資格のある人の8割以上が受給できていない、というように結論づけることはできない。とはいえ、同じく厚生労働省が公表した資産も計算にいれた捕捉率でも、32.1%と見積もられているから、本来であれば生活保護を受給できるはずの人々の多くが受給していないという事実には変わりはない。

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最終更新:2016/1/7(木) 2:43
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