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米アマゾン書籍読み放題開始、出版業界は音楽業界と同じ末路?

2014/7/23(水) 7:00配信

THE PAGE

 米アマゾンが新しいサービスを次々と投入しています。先月同社は、カメラで撮影した画像から商品を認識し、その商品をそのままアマゾンで購入できる新しいスマホ「ファイアフォン」や、定額制の音楽聴き放題サービスを登場させたばかりですが、今度は書籍読み放題サービスの提供を開始しました。

 同社は7月18日、電子書籍が読み放題になる「キンドル・アンリミテッド」を発表しました。同社が提供する60万冊以上の電子書籍が読み放題となるほか、数千のオーディオブックにも無制限でアクセスすることができます。料金は月額9.99ドルとなっており、手が出しやすい価格設定となっています。キンドルで読めるのはもちろんですが、iOSやAndroidなどキンドルのアプリが動く端末であれば、どれでも利用することができます。

 このサービスの発表に対しては、出版業界を中心に衝撃が走っています。それは月額読み放題サービスの導入によって、出版業界も音楽業界と同じような道筋を辿る可能性が高くなってきたからです。

 世界の音楽業界では、月額固定料金で音楽が聴き放題になるストリーミング・サービスが急拡大しています(唯一、日本だけが例外で、CD販売が堅調となっており、配信市場が逆に縮小しています)。スウェーデンの配信企業であるSpotifyや米国のPANDORA、アップルが提供するiTunes Radioなどが有名です。アマゾンが発表した定額配信サービスはこれらに続くものです。

 こうした聴き放題サービスの登場で、欧米における音楽市場は激変しました。ダウンロード販売の時代までは、レーベルと販売サイトの間で、アーティストごとの個別契約が結ばれていましたが、聴き放題サービスでは、原則として包括契約になっています。これによって、無名のアーティストが世に出るチャンスは増えましたが、アーティスト1人が得られる収入は、大幅に減少したといわれています。

 アマゾンの定額読み放題サービスはこれと同じ結果を出版業界にもたらす可能性があるわけです。出版社としては、単体で十分に収益になる書籍と、包括契約として読み放題サービスに提供する書籍をうまく使い分けたいところです。一方、アマゾンとしては、キンドルの販売を通じた自社サービスのシェア拡大が優先事項であり、人気書籍のサービス取り込みを図りたいと考えています。

 基本的には、両社の交渉で作品提供の幅が決まることになりますが、もし音楽業界と同じ結果になるということであれば、出版社側はより多くの人気作品を読み放題サービスに提供する必要が出てくるでしょう。そうなってくると、作者が獲得できる印税は少なくなる可能性があります。


(大和田 崇/The Capital Tribune Japan編集長)

最終更新:2015/5/16(土) 4:27
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