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なぜ今ベーシックインカムなのか 第5回:導入めぐる世界の動き 同志社大学・山森亮教授

2014/8/8(金) 16:00配信

THE PAGE

 とはいえ、「スイスのような比較的豊かな国で、なぜベーシックインカムが必要なのか」と、署名運動に携わった人びとは繰り返し問われてきた。署名運動の立役者の一人エノ・シュミットさんは、ベーシックインカムは貧困の削減だけのためのものではなく、むしろ生き方、働き方に関わる問題だと語る。現在の経済のしくみでは、一部の特権的な人びとはともかく、多くの人は食べるために働かなくてはならない。仕事とは、本来、共同体のため、他の人のため、社会のためであるはずなのに、それが自分と家族が何とか生きのびるためになってしまっている。ベーシックインカムの導入によって、人は目先の生活の必要から少し離れて、自分が社会のために何ができるのかを見つめて、そのために生きていくことができる、というのだ。

何のために働くか、何のために生きるのか

 このようにいうと、夢物語といわれるかもしれない。今の世の中、お金がある人ほど、自分のためだけに生きているではないか。ベーシックインカムの導入で人はかえって自分のためだけに生きるのではないか。そう反論されるかもしれない。

 『自由論』をあらわした19世紀イギリスの経済学者で哲学者のジョン・スチュワート・ミル、20世紀アメリカの経済学者ジョン・ガルブレイス、ドイツで生まれ20世紀アメリカで活躍した哲学者エーリッヒ・フロムなどは、こうした反論への再反論を試みているが、紙幅の都合でここでは触れない。【関心のある人は拙著『ベーシックインカム入門』光文社新書参照】

 筆者の経験では、ベーシックインカムを制度として説明すると、そのような反論にしばしば出くわしてきた。すなわち「多くのひとは、タダで金を手にすると働かなくなる、社会や他人を顧みなくなる」、などなど。これに対し、「ベーシックインカムがあれば、あなたはどのような人生を送りますか」と問いかけると、まったく違った答えがかえってくることが多かった。面白かったのは、前回記事で紹介したベーシックインカム世界ネットワークの大会で出会ったカナダの若者が、筆者と同じ経験を語っていたことだ。

 筆者自身は、ベーシックインカムがあれば、どのような人生を送るだろうか? そしてこの記事を読んでいるあなたは? (完)

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最終更新:10/5(金) 10:16
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