ここから本文です

国連人権委勧告や自民PTも 「ヘイトスピーチ」問題とは /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語

2014/8/28(木) 18:00配信

THE PAGE

 2014年7月、国連の人権規約委員会は日本政府に「ヘイトスピーチ」の禁止を求める勧告を出しました。

 ヘイトスピーチ(憎悪表現)とは国籍や人種といった個別の特性に属する集団を差別したり、それを扇動したり、または暴力をあおるような発言や行動を指します。人権規約委員会は在日朝鮮人に対してそれが認められると表明しています。また、サッカーJリーグでは、一部のサポーターが掲げた「ジャパニーズオンリー」の横断幕も問題視されました。

「表現の自由」か「差別」か

 日本は人種、民族、出身国などによる差別を禁じる国連人種差別撤廃条約に1995年加盟しています。ただし処罰義務の規定に関しては「憲法の表現の自由を妨げない限り」と制限付きでの受け入れとなっています。

 表現の自由とは憲法21条の「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」を根拠とします。戦前の大日本帝国憲法にも似た記載はあるものの、あくまでも「法律の範囲内」で、言論の抑圧が先の大戦を導いた元凶の1つと認識され、今の憲法はほぼ無条件で認めているのです。

 時にそれが他の権利を侵害するとして問題になってきました。もっとも議論があるのが憲法13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とのバッティングでした。人格やプライバシーまで暴かれるのまで自由なのかという論議です。

 ヘイトスピーチをめぐって表現の自由の範囲内か、差別なのかを争った民事裁判として2013年10月、京都地方裁判所の判決があります。市内の朝鮮人学校への抗議行動を人種差別撤廃条約が禁じる「人種差別」と断じ、街頭宣伝などヘイトスピーチを繰り返した団体に1226万円の損害賠償をするよう命じました。表現の自由に関しては「著しく侮蔑的、差別的な発言で、被告主張の『公益を図る』目的とは評価できない」とします。民事上の名誉棄損は訴えが真実であるか、そうである相当な証拠があるかという事実認定以前に公益目的でなければ成立します。

 判決がヘイトスピーチと名指ししなかったので多少あいまいなものの、実質的にそうと認めて違法と認めた形です。団体は控訴しましたが、2014年7月、大阪高等裁判所は棄却し、地裁判決を維持しました。団体側は上告し、裁判での決着はまだ現在のところまだついていません。仮に最高裁で確定すると「処罰立法行為を検討しなければならないほどの差別扇動はない」という政府(行政府)の主張と司法の判断が食い違う事態となります。

 安倍晋三首相は2013年5月の参議院予算委員会で「他国を誹謗中傷することで、まるで我々が優れているという認識を持つのは間違いだ。結果として我々自身を辱めている」と答弁しているようにハッキリとヘイトスピーチを非難しています。与党自民党も2014年8月、ヘイトスピーチへの対策を話し合うプロジェクトチームを設置しました。場合によっては立法措置の提案も出てくるかもしれません。

1/3ページ

最終更新:2016/2/7(日) 2:36
THE PAGE