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“エコ”か“エゴ”か 新型デミオ1.5ディーゼルが実現した「ドライバーが主役」

2014/9/7(日) 18:00配信

THE PAGE

 新型デミオで注目されるのはその1.5リットル、ディーゼルターボエンジンだろう。この乗用車用ディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」はすでに2.2リットル版がデビューしており、今回の1.5リットルはその設計概念を踏襲するものだ。

【写真】ハイブリッドの牙城に挑む新型デミオ1.5ディーゼル

 SKYACTIV-Dの技術的なポイントはディーゼルとしては圧縮比を低く抑えた点にある。そもそも論で言えば、ディーゼルは高圧縮比によって高い熱効率を達成できることがメリットだ。マツダはディーゼルの常識を覆して思い切って圧縮比を下げたのだ。

マツダ・ディーゼルの新しいアプローチ

 敢えて低い圧縮比を採用する狙いは世界中で厳しさを増している排気ガス規制のクリアだ。圧縮比を下げるとNOx(窒素酸化物)の発生が抑制できる。NOxが出なければ、高圧縮ディーゼルのように、尿素などの高価な後処理システムがいらない。つまりディーゼルエンジン=高コストという体質を脱却する突破口になり得る。それはコロンブスの卵なのだが、そのままではパワーが出ないし、効率が落ちる。ここをどう料理するかがマツダの腕の見せ所だ。

 前述のように、ピーク燃焼圧力が下がるとパワーが出ないことがネガなのだが、表裏一体に、燃焼圧力が下がることには意外にも多くのメリットが隠れていた。圧縮を下げるとエンジンが静かになり、耳触りな音も抑制できる。エンジンブロックの強度に余裕ができてアルミを使えるようになり、ディーゼルとしては異例に軽いエンジンができる。同じ理由でピストンなどの稼働部品を軽量化できたため、従来ディーゼルが苦手としていた高回転が可能になる。

 ディーゼルが抱えていた問題点は「高い・重たい・うるさい・回らない」だったが、SKYACTIV-Dは、低圧縮という常識外のアプローチによって、それらのネガをかなり解決することに成功したのである。

「可変ターボ」で問題点をクリア

 後はパワーをどうやって出すかだ。2.2リッター版は、排ガスがつらくない運転モードでは、大小2つのターボを駆使して最大限空気を押しこみ、パワーを補うことで解決を図った。1.5リッター版ではコストとスペースの都合で、ターボは一つしか付けられない。そこで「バリアブル・ジオメトリー・ターボ」を採用することにした。

 バリアブル・ジオメトリー・ターボとは、ターボの可変コントロール技術である。排気抵抗を極力下げたい高回転域と、多少、排気抵抗が増えてでも排気のエネルギーを最大限に活かしたい低回転域を両立させることが狙いだ。2.2リッター版では大小2つのターボに役割分担させていた部分を一つで賄うために可変技術を用いるわけだ。

 具体的には、エンジン回転数が低い領域で、ターボを十分に加速してやるために、タービンに排気を当てる部分をノズルで絞っている。水撒きの時ホースの先を絞ると水が遠くまで飛ぶのと同じ原理だ。これによって、排気の流速を高めて過給の立ち上がりを稼ぐ考え方だ。高回転ではこのノズルを解放することで、排気の抵抗を減らしている。2つのターボを使うのと全く同じというわけにはいかないが、それに近づける技術である。

 幸いなことにガソリンほど排ガス温度が高くないディーゼルの場合、排気タービン周辺に可動部品を装着してもトラブルが出にくい。だから耐熱性の高い高価な金属を採用せずとも可変機構を実現できる。

 もう一点クリアすべき問題は、小排気量ディーゼルの宿命との戦いだ。エンジンは1気筒あたりの排気量が小さいほど体積に対する表面積が増え、熱伝道でエネルギーが漏れる。漏れれば燃費が落ちて熱効率が悪化する。今回の1.5リッターエンジンについて、専門家が最も気にしていたポイントだ。SKYACTIV-Dでは、ピストン上面の外周にわずかな突起を作ることで、燃焼ガスが必要以上に撹拌されないようにし、高温ガス流とシリンダー壁の接触を減らすことに成功したのだという。

 結果としてデミオのディーゼルは従来のディーゼルエンジンと従来のガソリンエンジンの間に位置する性能を手に入れた。ガソリンより低速トルクが高く、ディーゼルより静かで高回転まで回る。そういうエンジンに仕上がった。

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最終更新:2016/2/16(火) 3:15
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