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社員の発明、誰のもの? 企業に帰属は妥当なのか

2014/9/9(火) 13:55配信

THE PAGE

 政府は、社員が発明した特許について、これまで個人の帰属としていた方針を大きく転換し、原則として企業に帰属させる方向で検討を開始しました。一部報道に「無条件で企業へ帰属」というものもありましたが、詳細については、議論が行われている最中です。少なくとも現時点では、企業帰属の方向で検討が進められており、早ければ来年の通常国会に法案が提出されることになります。

 現在の特許制度では、社員が業務を通じて発明した特許については、原始的にその権利は社員に帰属することになっています。また、企業がその特許を利用して事業を行うためには、発明した社員に対して相応の対価を支払う必要があるとされています。

 ただ、実際に発明した社員に対して巨額の報酬が支払われているのかというと、そうではないケースがほとんどです。というのも、日本の大企業は、終身雇用が保証されている代わりに、全体の利益を皆でシェアするという考え方が一般的だからです。特定の個人だけが莫大な報酬を受け取る仕組みにはなっていないわけです。

 この状況に対してノーを突きつけたのが、日亜化学工業の元社員で青色発光ダイオードを発明した中村修二氏です。中村氏は2001年、日亜社に対して20億円の支払いを求める訴訟を起こし、大きな話題となりました。裁判では、中村氏側の主張はあまり認められず、中村氏と日亜社は約8億円の和解金で合意しています。

 全体的には会社側の勝訴だったわけですが、これに危機感を募らせたのが財界です。このままではこうした裁判が頻発する可能性があるとして、特許が企業帰属になるよう積極的に政府に働きかけてきました。財界の動きを受けて安倍政権は2013年6月、知的財産政策に関する基本方針をまとめたのですが、その中には「発明制度について抜本的な見直しを図る」との内容が盛り込まれました。今回の特許庁における法改正の議論は、この基本方針の策定を受けて行われたものです。特許庁の審議会では、特許を企業帰属とする代わりに、社員に対する報酬について何らかのルールを設ける案などが検討されているようです。

 日本は技術者を高い報酬で処遇していないため、国際競争に負けているという見解が一部にあります。ただ、諸外国が皆、技術者を高額報酬で処遇しているのかというとそういうわけではありません。欧州では原則として、企業帰属としているところが多いですし、競争原理主義の国と思われている米国でも、それほどでもないというのが現実です。米国は、原則として権利は社員に帰属していますが、社員と企業の契約の方が優先されます。一部の傑出した人材を除いては、特許の権利は企業に帰属する雇用契約を結んでいる技術者がほとんどでしょう。

 発明の経緯や内容は様々であり、どのような帰属形態がよいのかはそれぞれのケースによって異なります。企業帰属にした上で一定の報酬を支払うのは現実的には妥当な解決策といってよいでしょう。一方で、法律によって一律に決めてしまうのではなく、状況に応じて、社員と企業が柔軟に契約を交わす方が合理的という考え方もあります。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/2/18(木) 4:42
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