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収入が増えても生活が豊かになった実感がないのはなぜ?

2014/10/4(土) 12:00配信

THE PAGE

 正社員の収入は増えているものの、非正規社員の収入は減っており、非正規社員として働く人の数は増加している。そんな実態が国税庁の調査で明らかになりました。

 民間企業で働く従業員の2013年における平均年収(年間の平均給与)は413万6000円で、2012年と比べて5万6000円、率にすると約1.4%増加しました。このうち、男性は511万3000円で女性は271万5000円となっています。これは全体の数字なのですが、正社員と非正規社員では大きな違いが見られます。

 正社員の平均年収は473万円で、昨年より5万4000円増加しました。一方、非正規社員の平均年収は167万8000円となっており、前年よりも2000円ほど減少しています。特に男性の非正規社員の給与の低下が目立ちます。全体としてみれば収入が増えているのですが、非正規社員の人は逆に収入が減ってしまっている状況です。

 非正規社員の収入は下がっているのですが、非正規社員の数は正社員よりも増加傾向にあります。正社員として働いている人は約3056万人となっており、前年より44万人、率にすると1.5%増加しました。これに対して非正規社員の数は1040万人ですが、前年よりも52万人、率にすると5.3%増加しています。正社員の増加よりも非正規社員の増加の方が多いのです。

 安倍政権は企業に対して異例の賃上げ要請を行い、今年の春闘では大企業を中心に多くの企業が賃上げを実施しました。賃上げが実現したにもかかわらず、生活が豊かになった実感が湧かない人が多いのですが、その理由のひとつは物価の上昇と考えられます。量的緩和策の影響や消費増税によって、賃上げの水準以上に物価が上昇したことで、消費者の購買力が減っているわけです。

 もうひとつの理由が、この非正規社員の増加という現象にあると考えられます。これまで仕事がなかった人が、非正規社員として働き始めた場合には、ゼロからのスタートですから、それは純粋にプラスとなるでしょう。しかし、増加した非正規社員の数の中には、これまで正社員だった人が非正規社員に変わった人が含まれていると考えられます。このような人たちの多くは、年収が減っている可能性が高く、当然のことながら、生活が豊かになった実感を持つことはできません。

 企業が従業員の給与に配分できる原資には限りがあります。原資が増えない中で賃上げを行うと、このように、給与の安い非正規社員へのシフトが進んでしまいます。本当の意味で国民の収入を増やしていくためには、より付加価値の高い事業への転換を積極的に行い、給与の原資を増やしていく必要があるでしょう。しかし、そのためには、人材の最適な再配置を実現する必要があり、雇用の流動化が求められてしまうというジレンマがあります。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2015/12/18(金) 4:15
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