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Wシリーズ最終戦、ジャイアンツとロイヤルズの間に存在した紙一重の差

2014/10/30(木) 23:20配信

THE PAGE

 その差は、紙一重。10月29日(日本時間30日)、カンザスシティ。3勝3敗で迎えた第7戦は、ジャイアンツが1点差を守りきって、この5年で、3度目のワールドシリーズ制覇を成し遂げた。だが、両チームに決定的な差などなかったのではないか。

 1点を追う5回裏、1死二塁で青木宣親が打席に入ると、この回からマウンドに上がっていたマディソン・バムガーナーの球をとらえ、レフト線に運ぶ。タイムリーかと思われたものの、打球はシフトを敷き、ライン寄りに守っていた左翼手のグラブに。ロイヤルズのネッド・ヨスト監督は、試合後、「あれが抜けていれば、どうなっていたかわからなかった」と話したが、まさにその通り。この場面だけでなく、9回にも相手のミス絡みで2死三塁と攻め込んでいた。どこかで流れが変わっても不思議ではなかった。

 ひとつ差があったとすれば、ジャイアンツには文句無しのMVPに輝いたバムガーナーという圧倒的な投手がいたこと。第1戦は、7回を投げて、3安打、1失点で勝ち投手。第5戦では、4安打完封勝利。そして、この最終戦では、中2日で5回から救援登板すると、最後まで投げ切って、勝利投手となった。対して、ロイヤルズには、そこまでの絶対的エースがいなかった。

 それでもロイヤルズは大健闘したと言っていい。そんな言葉は、彼らにとってなんの慰めにもならないだろうが、開幕前、いや、プレイオフが始まっても、彼らの快進撃を予想する人など、限られていたのだから。 いや、そういえば一人、自信満々でワールドシリーズ進出を予想していた人がいたーー。

 9月末のこと。ロイヤルズの本拠地、カウフマン・スタジアムを訪れた。1970年代中頃から、80年代にかけてロイヤルズはリーグ最強を誇り、1985年にはワールドシリーズ制覇。そのチームを圧倒的な打撃で牽引したロイヤルズのジョージ・ブレット副社長にインタビューを申し込むと、試合開始30分ほど前になって彼のオフィスがあるフロアの会議室に通された。

 黄色のシャツにホワイトジーンズというラフな格好で現れた彼は、インタビューの途中、部屋に差し込んだ西日を気にして、立ち上がった。

 「ちょっとまぶしいな」

 窓際まで行ってブラインドを閉めようとすると、下にいたファンが彼に気づき、手を振る彼らに、ブレットも手を振り返した。そのガラス張りの会議室からは、次々と球場に吸い込まれていくファンの様子がよく見え、ファンで埋まった眼下の光景に目を細めたブレットは、「どうだ?」とうれしそうに言ったあと、言葉を繋いだ。

「駐車場が車で埋まり、人の波がこちらに向かってくる。プロチームはこうでなくっちゃな」

 長く低迷が続いたロイヤルズ。試合が始まっても閑散としているスタンドの風景は、それが日常だった。1970年代から、80年代にかけては、もっと凄かったのですか? と聞くと、ブレットは、胸を張って言った。

「もちろんだ。これで我々がワールドシリーズにまで進めば、もっと活気にあふれる。こんなもんじゃない」

 そしてそのあと、彼はこう言ったのだった。

「きっとそうなる。今年のチームは、ワールドシリーズ制覇を十分に狙えるチームなのだから」

 その時点ではプレイオフ出場を決めておらず、ワイルドカードでなんとか、という状況だったが、彼はプレイオフに進むことをそもそも、一切疑っていなかった。

 「この球場は広い。ホームランはなかなか出ない。だから、外野には、守備範囲の広い選手を集めた。打者は、外野手の頭というより、間を抜くことのできるタイプが多い。短期決戦では、そういう野球をするチームの方が安定しているんだ」

 いわゆる”スモールボール”ということなのだろうが、プレイオフの序盤、ロイヤルズは本塁打で得点を重ねたのだから、彼らの潜在能力をブレットでさえある意味、過小評価していたといえよう。

 ところであの時、ブレットが、「我々は、チームでプレイしている」と話したことも印象に残っている。選手一人一人が、個々の役割に徹することが出来る、という意味で、それは、「青木に代表される」と言った。終盤で代走を出されたり、守備で交代を命じられる。それでも不満ひとつ漏らさず、役割を受け入れていることに対し、「あれが、プロだ」と評価したのだった。

 ただ、その点では、ジャイアンツにも違いはなかった。春のキャンプで、第7戦で決勝タイムリーを放ったマイク・モースに、「ジャイアンツとはどんなチーム?」とインタビューをしたことがある。すると彼は「このチームは、それぞれの選手が何かしら貢献しているイメージがある。フィールドにいるすべての選手が、何かをしている」と言った。

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最終更新:2015/10/6(火) 4:37
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