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“仰々しいリアウイング”80スープラの思い出話 サスペンションと空力の密接な関係

2014/11/9(日) 13:00配信

THE PAGE

 もう20年以上前のことになるが、某自動車雑誌の編集部に在籍していた頃、とあるレーシングドライバーの担当編集になった。彼はレースと並行して自動車評論をまさに始めるところで、記念すべきデビュー担当編集というわけだ。

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 それからしばらく、プロアスリートという人種が自分の技量向上を本気で目指した時、どのくらいの集中力を発揮するかを思い知らされることになった。彼は文章に関しては完全な素人だったので、原稿の直しは沢山あった。正直な話、最初の原稿は下書きに近い。

 自分でも経験があるが、原稿を直される時の気持ちは複雑だ。朱字を見ると否定されているような気分になり、不愉快な一方で「なるほど」と思うこともある。助かる部分は確かにあるのだが、全体としてはやはり不愉快な気持ちは拭えない。しかし、彼はその朱入れに極めて積極的で、抵抗するどころか前のめりにとことん修正を要求してきた。

 まだメールが一般に普及する前だったので、原稿はファックスで届く時代だった。彼はいつも原稿が編集部のファックス機からプリントされる前に電話を掛けてきて「どう? どこを直せば良い?」と畳みかけて来る。

 せかされながらファックスが吐きだした原稿を読んで、直しを入れて行くと「なるほど、そう書けばいいのか」と言いながら電話の向こうでメモを取る。そして「他には。他に無い?」が永遠に続く。ようやく解放されて、自分の原稿に戻ろうとするとまた電話だ。「さっきの直しは反映した。後はどう? どこを直せば良い?」。

 怯みも曇りもなく、とことん無邪気に自分の技術向上を目指すのだ。問題を指摘してくれる相手がいれば、最後の一滴まで絞りつくすようにそれを吸収する。相手の状況なんて顧みないその目的追求姿勢をみてプロと言うのはこういうものかと思った。下らないプライドで朱字ごときにいちいち不愉快になってしまう凡人とは割り切りのレベルが違うのだ。しかし締切の最中にそれを何度も繰り返されるとこちらとしてはギブアップしたくなるが、それでも彼は諦めない。その不断の努力を積み重ねながら、数年の間に彼は見事な原稿を書くようになり、その後、著作も何作か出した。

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最終更新:2016/2/25(木) 3:59
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