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サカナクションとゲスの極み乙女。に見る「フェス中心」という価値観からの転換 音楽ライター・金子厚武

THE PAGE 2014/11/10(月) 10:20配信

 10月11日付の『オリコン』で、サカナクションのシングル『さよならはエモーション』と、ゲスの極み乙女。のアルバム『魅力がすごいよ』が、共に週間ランキングで初登場4位を記録した。2010年代前半を代表する人気バンドの現在からは、邦楽バンドシーンにおけるフェスを中心とした価値観が転換点を迎えたように感じられる。

 15年目を迎えた国内最大の邦楽ロックフェス『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』は、これまでの3日間開催から、今年初めて週を跨いで4日間開催され、約24万人を動員。「フェス」という言葉はもはや音楽シーンの枠を超え、「夏」を象徴するキーワードとして、社会的にも認知された。こうしたフェス文化の拡大によって、「フェスでいかに盛り上がるか」がバンドを評価する上での大きな基準となり、その中で注目されたのが、取り入れやすく、なおかつのりやすい、「4つ打ち」のリズムを重用した若手バンドたち。しかし、その一方では、ひとつの価値観が強くなり過ぎてしまったことによって、その尺度に自分たちを合わせざるをえず、筆者のインタビューで「フェス疲れ」を吐露するバンドも少なくなかった。

 昨年『NHK紅白歌合戦』への出場を果たし、バンドシーンにおけるトップランナーの地位を確立したサカナクションは、言わば「4つ打ちブーム」の先駆けで、フェスとの関係性は切り離せない。とはいえ、そもそも彼らはクラブミュージックの要素を取り入れて、独創的な楽曲を作ることを目的としていたバンドであり、決して「盛り上がるため」に4つ打ちを使っていたバンドではない。今年の夏フェスではこれまで以上に実験的なクラブミュージック寄りのセットを披露し、一方でエモーショナルなロック路線の『さよならはエモーション』をシングルカットした背景について、中心人物の山口一郎はこんな風に語っている。

 「フェスで盛り上がるものが正義だっていう時代なんだなって。そこに絶望して。自分が作りたいものってそこじゃなかったし、だけどそこを人に求められていて、自分達が認められてるのもそこだっていう……そういうことに対する絶望があった」(『MUSICA』2014年11月号より)

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最終更新:2016/2/18(木) 2:50

THE PAGE