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「長期の審理事件は対象外にできる」との閣議決定 裁判員制度はどうなる? 大宮法科大学院教授・萩原猛

2014/11/10(月) 15:38配信

THE PAGE

 政府は10月24日、裁判員裁判の対象から審理が長期間に及ぶ事件を除外できる規定を盛り込んだ裁判員法改正案を閣議決定した。法案が成立すれば、平成21年から実施されている裁判員制度の大きな見直しとなる。今回の決定をどう考えればいいのいか。裁判員制度に詳しい弁護士で、大宮法科大学院教授の萩原猛氏に聞いた。

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 裁判員制度とは、重大な刑事事件の裁判を3人の裁判官と6人の国民(20歳以上の有権者)の中から選抜された裁判員との合議体で行うという制度である。この制度は、平成13年に内閣に提出された司法制度改革審議会の意見書に基づき裁判員法が制定され、平成21年5月から実施されている。毎年、1500名くらいの被告人が裁判員裁判による刑事裁判の審理を受けている。

 裁判員は、裁判官と対等の評決権を持って、有罪・無罪の判断をし、有罪の場合には刑を決定する。一般国民が刑の決定まで行うという点ではヨーロッパの参審制度に似ているが(陪審員は原則として刑の決定には関与しない)、事件に応じてその都度裁判員が選抜されるという点ではアメリカの陪審制度に似ている(参審員には任期がある)。

 先の司法審意見書は「21世紀の我が国社会において、国民は、これまでの統治客体意識に伴う国家への過度の依存体質から脱却し、自らのうちに公共意識を醸成し、公共的事柄に対する能動的姿勢を強めていくことが求められている。国民主権に基づく統治構造の一翼を担う司法の分野においても、国民が、自律性と責任感を持ちつつ、広くその運用全般について、多様な形で参加することが期待される」として、裁判員制度を提案した。そこには、秩序維持に傾斜した思考傾向から逃れられない官僚裁判官のみの裁判に、多様な経験に根ざした一般国民の良識を注入して、正しい裁判を実現しようとの意図が込められていたのである。

長期審理事件を裁判員裁判対象外とした閣議決定について

 政府は、10月24日「審理が著しく長期間に及ぶ事件」を裁判員裁判対象事件から除外できる旨の規定等を内容とする裁判員法改正案を閣議決定した。現在、裁判員裁判の対象となる事件は、法律に死刑・無期刑が規定されていたり、故意に被害者を死亡させたような重大事件であり、具体的には、殺人・傷害致死・強盗致死傷・現住建造物放火・強姦致死傷等の事件である。現行法においても、被告人やその所属団体の言動等によって裁判員やその候補者に対し危害が加えられるおそれがある場合等には、裁判員裁判対象事件であっても対象から除外することが認められている。先の閣議決定は、この除外できる事情を拡げたことになる。

 裁判員制度が、国民に一定の負担を強いる制度であることは間違いない。1日1万円程度の日当で、何日も法廷での審理に立ち会い評議に参加するのは、遠慮したいと思う人もいるだろう。裁判員に過度の負担を求めれば、裁判員制度は国民の支持と協力を得られなくなるおそれもある。多くの国民が非協力の態度を示せば、司法の国民的基盤の確立を求めた制度が、国民の意思によって崩壊の道をたどることになる。こういった心配を払拭するための配慮が、今回の閣議決定の意味と言えるだろう。

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最終更新:2015/12/27(日) 4:15
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