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急速に進む企業の株主還元 ── 背景に公的年金の投資スタンスの変化も

2014/11/28(金) 7:00配信

THE PAGE

 配当や自社株買いなど、企業が得た利益を株主に還元する動きが活発になってきています。企業の手元資金が潤沢になっていることや、利益還元に対する意識が高まってきていることが背景ですが、公的年金の投資スタンスの変化が大きく影響していると指摘する声もあるようです。

進む企業の株主還元

 今期に入って、NTTドコモや三菱商事、野村ホールディングスなど大手企業が相次いで自社株買いの枠を設定しています。さらに積極的なところでは、利益のほとんどを自社株買いや配当に充当するところも出てきました。金属加工機械大手のアマダは今年5月、利益の半分を自社株買いに、残りの半分を配当に充当する方針を明らかにしました。2015年3月期の純利益予想は約180億円ですが、このほとんどが自社株買いか配当という形で株主に還元されます。

 カシオ計算機も同様です。同社は2014年3月期決算には25円の配当を行いましたが、今期はこれを30円に引き上げることを検討しているようです。同社の発行済み株式数は約2億7000万株なので、実際に30円に増配されれば、今期の配当総額は80億円を超えることになります。同社はすでに120億円を超える自社株買いを実施しており、これを合わせると株主還元額は200億円を超えます。今期の純利益見通しが230億円であることを考えると、アマダと同様、利益のほとんどを株主還元に充てる計算になります。

公的年金の投資スタイルが変化する背景は?

 上場企業が相次いで株主還元策を強化している背景には、企業収益の増加により過去最高水準の内部留保が蓄積されていることや、企業の資本効率に対する意識が高まってきたことなどがあるといわれています。しかし、これまで日本企業のほとんどは、株式の持ち合いに代表されるように、株主に対する利益還元には非常に消極的でした。ここに来て、株主対応策を急いで強化している背景には、公的年金や金融当局の姿勢の変化があります。

 日本の公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、企業の資本効率を重視し、企業に対して高いROE(自己資本利益率)を求めていく方針を明らかにしています。年金の財政が逼迫しており、GPIFはより高い運用実績を上げなければなりません。株主に対する利益還元が十分でない企業は、公的年金という巨大ファンドの投資対象から外れてしまう可能性があるわけです。また、金融庁は企業統治(コーポレートガバナンス)を強化するための指針作りを行っており、社外役員の導入や透明性の確保などを盛り込んだ原案を策定中です。もしこれが実際に導入されれば、企業による株主還元はさらに進むでしょう。

 日本企業の多くは、良くも悪くも、株主ではなく、従業員や取引先を重視するという、いわゆる日本型経営を行ってきました。しかし、労働者の老後を支える年金財政が逼迫してきたことで、企業経営が欧米型に変化しつつあるというのは何とも皮肉な話です。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2015/3/17(火) 4:30
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