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海上の漁師を守る「命の地図」 ── 南海トラフ地震に備え、南伊勢町が作成

2014/12/29(月) 12:10配信

THE PAGE

 8月の豪雨による広島の土砂災害、御嶽山の噴火、そして長野県北部地震。2014年も痛ましい災害が次々と日本列島を襲い、そのたびに防災対策の課題が浮き彫りとなった。現在も含めた近い将来、発生が避けられないとされる「南海トラフ巨大地震」が頭をよぎる人も多かったのではないだろうか。マグニチュード8.7、震度は伊勢志摩地域、東紀州地域を中心に6強以上の揺れに加え、9mを超える大津波も起こりうると懸念される大地震。とりわけ甚大な津波被害が想定される三重県南伊勢町では、東日本大震災の被害を教訓とした漁師らの避難対策に尽力してきた。沿岸部に位置し、過去何度も津波被害に苦しめられてきた南伊勢町は、漁業によって成り立つ土地であり、漁業者を守るための具体的な防災対策が急務。2014年9月には3回目となる海上からの避難訓練を実施し、訓練時のGPS調査をもとに、漁船のための海上避難MAPを制作中だ。操業中の避難については軽視されてきた中にあって、これは全国的にも先駆けとなる試みだという。

津波の時は沖へ出ろ。漁師に伝わる先人の教え“沖出し”とは?

 地震発生時、港へ戻るか、さらに沖へ出るか。海上にいる漁師にとっては、その判断が生死を分ける。「地震が来たら沖へ出ろ」。これは各地の漁師たちにとっての津波から船を守る原則であり、先人から言い伝えられてきた教えだ。津波が到来することが確実な状況で、津波に向かって沖へ出るのは恐ろしいことにも思える。

 しかしある程度の水深地点まで到達すれば、船は津波の影響を受けずに乗り切ることもできる。成功すれば命だけでなく船も守れるとあって、この「沖出し信仰」は根強い。津波の到来までに母港へ戻って高台に逃げる手もあるが、命は助かるものの、船は犠牲になってしまうからだ。

 3年半前の東日本大震災ではどうだったか。沖へ出て津波を乗り切った船がある一方で、波にのみ込まれた船もあった。沖出しを成功させるには浜の立地や水深、津波の高さなどの好条件が重なる必要がある。船が海上のどこにいるかによってとるべき行動は異なるため、海とともに生きる漁師たちの「勘」は尊重しつつも、判断のための指針は必須だ。

 「犠牲者を一人も出さないために、漁師たちを安全に逃がす方法を確保してほしい」。

 東日本大震災後、地元の漁協のはたきかけにより海の防災対策に取り組み始めた南伊勢町。2014年9月には愛知工業大学などからなる研究チームの協力を得て、3度目となる海上避難訓練を実施。GPSを用いて避難行動を追跡し、得られたデータをもとに海上避難マップを作るのが大きな狙いだ。

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最終更新:2014/12/29(月) 12:10
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