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本当に日本に工場は戻ってくるのか? ── 製造業国内回帰の動き

2015/1/19(月) 7:00配信

THE PAGE

 製造業の一部で、海外に移した生産拠点を国内に戻す動きが出てきています。円高によって日本の空洞化が進んだといわれていますが、国内に工場は戻ってくるのでしょうか。

 パナソニックは、エアコンや洗濯機などの家電製品について、今年の春以降、国内生産に切り替えることを検討しています。またキヤノンも、今後3年以内をメドに、国内の生産比率を現行の4割程度から6割程度まで引き上げる方針を明らかにしています。

 日本の製造業はここ10年の間に、生産拠点を次々と海外に移してきました。このため国内で販売する製品についても、一旦海外で生産し、それを逆輸入しています。円安が進むと輸入コストが増加しますから、場合によっては製造の一部を国内に切り替えた方が有利になるわけです。

 市場では今後、長期にわたって円安が続くという見方が有力ですが、円安によって海外に出て行った工場が次々に国内回帰するのかというと、必ずしもそうではありません。日本最大のメーカーであるトヨタは、基本的にグローバルな生産と販売の体制を変更する予定はないとしていますし、パナソニックやキヤノンが製造拠点の国内回帰について検討を開始したのは1年以上も前の話です。為替が急激に円安になったことで決断したものではないのです。

 製品の製造コストに占める人件費の割合は約25%といわれており、コストのほとんどが、部品の調達コストや減価償却費、研究開発費で占められています。これらの費用はどこに生産拠点があっても基本的に変わりません。為替によって影響を受けるのは、人件費の部分だけですから、円安によって国内に生産拠点を戻しても、得られる効果は限定的なのです。現代の製造業では、需要のある地域で必要なモノを生産するという「地産地消」の流れが顕著になっていますから、海外向け製品を製造する工場が国内に戻ってくる可能性は低いと考えるべきでしょう。

 今回のパナソニックやキヤノンの取り組みも、地産地消という観点で考えればスッキリします。例えばパナソニックの白物家電は主に日本市場で販売されています。これはグローバルに見た場合大きな市場ではなく、しかも日本には設備が余っている工場がたくさんあります。最近では中国をはじめとするアジア地域の人件費が急騰しており、日本の賃金と大差ありません。円安をひとつのきっかけとして国内に生産拠点を戻す判断は合理的といえます。

 しかし、グローバルに、しかも大規模に販売する製品の場合、そうはいきません。需要のある地域に近い製造拠点で、できるだけ安価に製造することが重要ですから、日本がそれに適した場所であるとは限りません。さらにいえば、日本は人口減少から深刻な人手不足に陥っており、この状況は今後さらに顕著になると予想されています。日本では、労働力を十分に確保できない可能性が高く、積極的に生産拠点を移す企業は少ないと考えた方が自然でしょう。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2015/12/26(土) 3:34
THE PAGE