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「アメリカ二大政党制の岐路」(4)移民が米政治の膠着状態を変える? 上智大学教授・前嶋和弘

2015/1/21(水) 8:00配信

THE PAGE

 共和党と民主党との妥協のない対立で、ここ数年のアメリカ政治はかつてないほどの膠着状態が続く中、機能不全を超えることができるような今後のシナリオはなかなか思いつきません。それでも現在、拮抗している民主党と共和党のバランスが変わっていく要因はいくつかあります。その代表的なものが移民の存在です。急増している移民の存在は、両党のバランスだけでなく、それぞれの党が推進する政策そのものを大きく変えていく可能性があるためです。

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歴史上で最も多い移民数

 アメリカを目指す移民の数は現在、歴史上、最も多くなっています。移民の数が非常に多い一種の移民ブームとなっています。2001年から2010年までの10年間に永住権を与えられた移民の数は1050万人を超えており、10年単位ではアメリカの歴史上もっとも移民の数が多くなっています(以下、データはすべてアメリカ国勢調査局)。それ以前の1991年から2000年までが908万人、1981年から1990年までが725万人と移民増加のペースは右肩上がりです。アメリカ史の教科書などで急激な人口増加の例として、よく取り上げられる19世紀から20世紀初めの新移民(東欧・南欧などからの移民)が集中した1901年から1910年の移民の数は875万人でしたので、これに比べても過去30年間の移民数の急伸が目立っています。

 2010年のデータによると、3億人以上の人口の中で外国生まれの比率は13%です(アメリカ国籍を取得しているのは5.6%。取得以前の段階の人が7.3%)。外国生まれの53.1%がヒスパニック系(ラテン系)です。ヒスパニック系とはメキシコ、中南米、カリブ海諸国からの移民の総称です。ヒスパニック系住民の人口増加のペースは目覚ましく、1980年から2010年までの30年間でなんと3.5倍も増えています。2000年の国勢調査の段階で、ラテン系・ヒスパニック系住民数がアフリカ系住民数を抜き、最大の人種マイノリティとなっています。その後も人口は増え続け、2012年の推計では全米の17%を占めるまでに増加しています。

 アジア系の人口は全米の5.6%ですが、増加のペースは1980年から2010年までの30年間で4.9倍とヒスパニック系を凌駕しています。アジア系移民が多いのは、フィリピン、中国、インド、ベトナム、韓国などからで、アジア系といっても東アジアだけでなく、南アジアなども含まれています。

 よく指摘されるように、移民する条件には、移住する先の国のニーズ(プル要因)と移住する元の国の状況(プッシュ要因)の2つがあります。アメリカの場合、労働力としての移民が常に必要な経済構造になっており、これがプル要因なっています。プッシュ要因としては、アメリカで働く際の賃金の高さなどがまず挙げられますが、1965年の移民法改正に端を発する法的条件の緩和で移民へのハードルが低くなっています。先に移民した人が家族の一部を呼び寄せ、さらに他の血縁関係のある人を呼び寄せる形で、同じ人種・エスニシティの人たちの移民コミュニティ形成のスピードも速くなっています。

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最終更新:2015/11/17(火) 3:56
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