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近年は中東で目立つ日本人誘拐・人質事件 早稲田塾講師・坂東太郎のよくわかる時事用語

2015/1/25(日) 17:00配信

THE PAGE

 「イスラム国」が日本人2人を拘束し、殺害予告をして2億ドルという大金を身代金として求める事件が起きました。これまでにも海外で日本人が誘拐・拉致・人質にされる事件がいくつも発生しています。どのような事件があったのでしょうか。

【写真】相次ぐ拉致報道 なぜ「イスラム国」は外国人を拘束するのか

■20世紀後半

 1970年代ごろから見受けられるのは主に南米やフィリピンに長期滞在している商社マンやメーカーの社員などの誘拐です。犯人またはそうと目される個人・集団は反政府勢力(多くは左翼過激派)と政治色のない単なる身代金目的誘拐でした。また政治目的を達成させるためのテロ行為のように装っていても実態は身代金だけが目当てとみられる犯行も少なくありません。その区別を取りあえず犯行声明(※注1)の文言でわけてみると次のようになります。

1)政治目的があった
 1978年のエルサルバドルでの邦人誘拐殺害事件。合繊会社の日本人男性社長が反政府の左翼過激派に誘拐され殺害された事件です。声明と身代金要求がありました。社長は遺体で発見されます。1990年に民間の男性農業指導者が誘拐され65日後に解放された事件も反政府共産ゲリラ「新人民軍」(NPA)が被害者男性の活動がNPAへの敵対行為だとの声明を出しています。

 1996年のペルー日本大使公邸事件は左翼過激派トゥパク・アマル革命運動(MRTA)が大使館員など約600人を人質に取り身代金の支払いとともに日系人のフジモリ大統領に政策転換を迫るなど明白な政治目的を掲げました。徐々に人質が解放されていくなか息詰まる交渉が続き、最後はペルー軍が突入して解放しました。日本人人質は無事でしたが外国人の人質1人とベルー軍人に死者が出ました。MRTA側は全員死亡。

2)政治目的は不明
 最も大きな事件は1986年にフィリピンの左翼過激派に誘拐され4か月月半監禁された三井物産マニラ支店長の若王子信行さんでしょう。犯人とおぼしき者から指を切断したような写真や男性の悲痛な声の録音が送りつけられ騒然としました。犯行はNPAとみられましたが脅迫状などに政治目的はなかったもようで純粋な身代金目的というのが大方の見解です。三井物産が身代金を支払い解放されました。若王子さんにけがはありませんでした。

 先の農業指導者誘拐も実は政治目的など大した問題でなくNPAの金ほしさの犯行に過ぎないとの見方があります。

 1998年にコロンビアで起きた男性農場経営者が誘拐され身代金を要求された事件も背後に左翼武装組織「コロンビア革命軍(FARC)」がいたのは明白です。しかし明らかな政治目的は見当たらずやはり身代金が目的だとみなされています。FARCは2001年にも誘拐された邦人男性の身代金を要求する事件を起こしています。男性は殺害されました。

 誘拐は他にもメキシコやパナマといった中米でも発生しており、やはり仕事で長期滞在している日本人がターゲットになっています。したがって日本人の感情としてはおおむね「お気の毒」であり、会社が身代金を支払って解決する手法は賛否両論ありながら「仕方ない」という意見も少なくありません。発生国も相手が反政府勢力だと本音では愉快ではないし「払うべきではない」という態度に徹したケースもあります。ただ事件には政治思想のまったくない単なる誘拐犯もいたので日本との友好を考えて寛大な措置に止めてくれた場面も存在しました。

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最終更新:2016/2/1(月) 3:42
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