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<インド>犠牲者の怨念 ── 高橋邦典フォト・ジャーナル

2015/1/26(月) 21:00配信

THE PAGE

 西部のグジャラト州において1000人以上の死者をだしたヒンドゥーとムスリム間の宗教抗争、俗にいわれる「グジャラト暴動」の10周年に、この土地を訪れた。州都アーメダバッドのムスリム地域に、朽ち果てた建物が並ぶ一角がある。暴動の際に、ヒンドゥー教徒の群衆によって襲われ、焼き討ちにされた住宅群だ。少しでも空き地があればどこからともなく人が住みついてしまうようなこの国で、10年たってもまだ廃墟のまま残っていることに少し驚かされた。隣の敷地でみかけた家族に聞いてみると、怖がって人がよりつかないという。ここでは女子供を含め多くが殺されたが、建物からでることができず焼け死んだ者が大半だったという。そんな犠牲者たちの怨念が残っていると信じられているのだ。建物の壁はまだ黒焦げのまま、ところどころ崩れかけている。確かに、日が沈んでから訪れたら、相当気味が悪いだろうと思う。

 惨殺の傷跡が人々の記憶から薄れていくには、10年という年月は短すぎるのかもしれない。

(2012年6月)

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高橋邦典 フォトジャーナリスト
宮城県仙台市生まれ。1990年に渡米。米新聞社でフォトグラファーとして勤務後、2009年よりフリーランスとしてインドに拠点を移す。アフガニスタン、イラク、リベリア、リビアなどの紛争地を取材。著書に「ぼくの見た戦争_2003年イラク」、「『あの日』のこと」(いずれもポプラ社)、「フレームズ・オブ・ライフ」(長崎出版)などがある。ワールド・プレス・フォト、POYiをはじめとして、受賞多数。

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最終更新:2015/4/1(水) 4:45
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