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イスラム教の「過激派」とは なぜ自爆テロまで行うのか? 国際政治学者・六辻彰二

2015/1/30(金) 16:00配信

THE PAGE

 「イスラム国」(IS)による日本人拘束事件で、日本でも改めてイスラム過激派に対する関心が高まっています。なぜ、ISなどのイスラム過激派は、人質の殺害や自爆テロまで行うのでしょうか。イスラム過激派の特徴について考えます。

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「イスラム」の復興

 イスラムに限らず、宗教が世界的に政治的な問題として浮上したのは、1970年代の半ばでした。中東に関していうと、それまではナショナリズムや社会主義などの世俗的イデオロギーが広がりつつあり、エジプトのナセル大統領が唱えた、既存の国境を超えてアラブ民族が結束するべきという「アラブ民族主義」は、当時の中東で最も影響力のあるものでした。

 しかし、チェコスロバキアの民主化運動「プラハの春」(1968)への軍事介入で、ソ連や社会主義に対する開発途上国の信頼は揺らぎ、さらに、第三次中東戦争でのアラブ諸国の大敗(1967)、ナセルの死去(1970)、エジプトによるイスラエルとの単独和平(1978)などにより、アラブ民族主義も求心力を低下させていきました。こうした世俗的なイデオロギー的な真空状態を埋めるように、中東ではイスラム の影響力が回復していきました。格差などの社会問題に直面しやすい貧困層の救済に、イスラム団体があたることが多いことも、それを加速させたといえます。

「イスラム主義」とは

 「イスラムの教義に基づいて社会を改革する」という立場は、イスラム主義(Islamism)と呼ばれます。それは一つの世界観、社会の現状に対する批判的な価値判断、そしてその改善策を含む、一種のイデオロギーです。イデオロギーそのものが近代になって初めて生まれたものです。その意味で、イスラム主義は単純に近代性と衝突するものでなく、その一つの派生物といえます。また、イスラムを信仰するひとの全てがイスラム主義者というわけではありません。

 イスラム主義者は、預言者ムハンマドが布教した当時の信徒共同体(ウンマ)を社会の理想的モデルとする点で、ほぼ共通します。そのため、「政教一致」を強調する点で、世俗的イデオロギーと異なります。イスラム主義は宗教としてのイスラムが復興した1970年代半ばから広がり、2010年12月にチュニジアで始まった政治変動「アラブの春」では、イスラム主義政党が各地で林立しました。

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最終更新:2016/2/6(土) 3:01
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