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世界のリーダーたるドイツに導いたワイツゼッカー元ドイツ大統領の功績

2015/2/9(月) 7:00配信

THE PAGE

 戦後ドイツでもっとも偉大な政治家の一人といわれたワイツゼッカー元大統領が1月31日亡くなりました。ワイツゼッカー氏最大の功績は、ナチス・ドイツという負の遺産を直視することで、ドイツの国際的な信頼を高め、東西ドイツの統一を成し遂げたことです。ドイツは、欧州はもちろんのこと、世界のリーダーともいえる立場になっていますが、ワイツゼッカー氏の存在がなければ、今のドイツは存在しなかったでしょう。

 よく知られているように、第二次世界大戦の敗戦国であるドイツは、戦後、米ソによって東西に分断されていました。西ドイツは、工業製品の競争力を武器に高い経済成長を実現しましたが、ナチス・ドイツの呪縛から完全には脱却できず、政治的なリーダーシップは今ひとつでした。

 ワイツゼッカー氏は、ドイツ敗戦40周年にあたる1985年5月、連邦議会において「過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目となる」という名演説を行い、ドイツ国民と世界に対し、ナチス・ドイツによる犯罪はドイツ人全員が負う罪であることを強調しました。この演説をきっかけに、ドイツの歴史問題は解決に向かい、1989年の東西ドイツ統一につながっていきます。

 戦争の責任はナチスにあるとし、それを生み出した責任を全ドイツ人で負うという考え方には、いろいろな意見や批判がありました。しかし、内外にそれをはっきりと宣言し、ナチスによる罪は自国の手で徹底的に裁くという姿勢を明確にしたことによって、ドイツが永久に戦争責任を負い続けるという状況から脱却することに成功したのです。

 EU(欧州連合)は経済的な集まりというイメージが強いですが、もともとは、ドイツが、かつてのナチスのような行動に出ないよう、政治的に封じ込める目的で作られたものです。逆に、今となってはドイツがEUのリーダーとなり、統一された欧州というビジョンを内外に示す役割になっていますが、それも、ワイツゼッカー氏の尽力によって、ドイツに対する警戒心が払拭されたことが大きく影響しています。

 ワイツゼッカー氏はあまりにも理想主義的であったことから、コール元首相など、現実主義的な政治家とはたびたび衝突しました。しかし、最近になってギリシャ問題や移民問題などが相次いで発生し、欧州の理念そのものが問われる状況となっています。今の欧州には、ワイツゼッカー氏のように真正面から理念を説く政治家が求められているのかもしれません。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2015/10/1(木) 4:16
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