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「ホテルオークラ」建て替えに反対の声 ── そうはできないホテルオークラの事情とは?

2015/2/13(金) 16:00配信

THE PAGE

 建て替えが迫っている「ホテルオークラ東京」に待ったの声がかかりました。イタリアのファッション・ブランド「ボッテガ・ヴェネタ」のクリエイティブ・ディレクターが、存続を求める声を上げたのです。

 ホテルオークラは昨年5月、同社の旗艦ホテルであるホテルオークラ東京の本館を建て替える方針を明らかにしました。ホテルオークラ東京は帝国ホテル、ホテルニューオータニとともに、日本の三大高級ホテルの一つといわれていますが、これらの中でも、米国大使館に隣接するオークラは別格とされています。外国要人の利用も多く、昨年4月に来日したオバマ大統領は、迎賓館での宿泊を断り、わざわざオークラに滞在したほどです。

 ホテルオークラ東京の建物は1962年に建設されたもので、和の様式とモダニズム建築を融合した傑作といわれています。同ホテルが建つ場所は、大倉財閥の邸宅跡であることや、虎ノ門という超一等地にありながら、周囲を見下ろす小高い丘になっていることなどもあり、建物がいっそう引き立つ環境となっています。

 存続を求める声を上げたトーマス・マイヤー氏は、モダニズム建築発祥の地であるドイツ出身ですから、同氏がオークラの建物を高く評価したのもうなずける話です。

 東京ではこのところ外資系ホテルの進出が相次いでおり、国内資本のホテルから顧客が奪われる状況が続いています。オークラも開業から50年以上が経過しており、施設の老朽化によって客単価の低下が懸念されていました。新しく建設される施設は、高さが200メートルの高層棟と、80メートルの中層棟の2つのビルで構成され、客室数は550室を予定しています。高層棟にはオフィスも入居する予定ですので、かなり実用的な商業施設になる可能性が高いでしょう。

 ビジネス戦略上、施設を新しくするというのはひとつの選択肢です。ニューヨークやロンドンなど経済が活発な地域は多くのホテルが建て替えを行っています。一方、ヒルトン・グループが所有し、ニューヨークの名門といわれているウォルドルフ・アストリア・ニューヨークのように、建物を維持した形で全面改装を計画するなど、古い建物を残す動きもあります。

 同じ港区では、かつての赤坂プリンスホテルが取り壊され、新しい複合施設として生まれ変わろうとしています。赤坂プリンスホテル新館は竣工が1983年とそれほど古いビルではありません。しかも丹下健三氏という世界的な建築家がデザインした建物でもあり、文化的価値が非常に高いといわれてきました。

 同ホテルを所有する西武グループは、ホテル建設を主導したかつてのオーナーである堤義明氏から、銀行に経営の主導権が移っており、収益を上げることが強く求められています。経営上やむを得ない面もあると思いますが、せっかくの建造物が簡単に解体されてしまうのは少し寂しい気がします。

 米国や英国では、当たり前のように築100年の住宅やオフィスビルが使われています。日本はアジアの中で唯一、自力で近代化を成し遂げた国であり、その意味で、近代文化遺産は非常に貴重なものです。古い建造物を維持していくという感覚がもう少しあってもよいのかもしれません。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/2/12(金) 4:00
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