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ギリシャがナチス占領賠償を要求、一蹴したドイツは戦後処理をどう進めてきたの?

2015/2/20(金) 9:00配信

THE PAGE

 ギリシャの新政権が、EU(欧州連合)に対して財政緊縮策の見直しを求めて交渉を行っていますが、ギリシャ側は突如、ナチス・ドイツによるギリシャ占領に関する賠償を要求し、各国を驚かせました。ドイツ側は解決済みという立場ですが、そもそもドイツの戦後処理の問題はどうなっているのでしょうか。

 ギリシャ側は、第2次世界大戦中のナチス・ドイツによって強要された戦時融資の返済や、占領による損害として1620億ユーロ(約22兆円)を請求する権利があると主張しました。これに対してドイツ側は、ギリシャの要求は根拠がないとして、応じるつもりがないことを明確にしています。

 ドイツは第2次大戦で敗北しているわけですが、厳密な意味で同国は、戦争に対する賠償は行っていません。ドイツは戦後、米ソの対立によって東西ドイツに分裂してしまいました。ドイツの分裂後、米国や英国をはじめとする西側諸国は1953年「ロンドン債務協定」を結び、最終的な賠償については東西ドイツの統一後、平和条約を締結するまで棚上げにすることについて合意しました。

 しかし、1990年に東西ドイツ統一が実現した時には、平和条約は結ばれず、その代わりにドイツ最終規定条約というものが締結されました。そこでは、戦争に関する問題はすべて解決済みという認識になっており、結局、ドイツは賠償を行わずに戦後問題を事実上、終結させています。

 もっとも、その間にドイツは何もしなかったわけではありません。ドイツは戦争賠償という形ではなく、ナチスの不法行為に対する補償については積極的に行ってきました。またナチスが行った犯罪については、その関係者を自国の手で徹底的に裁いています。ナチス関係者による犯罪が立証された場合には、たとえそれが、組織末端の人物で、現在は高齢者になっていたとしても容赦なく逮捕・起訴されます。いくらナチスの関係者だったとはいえ、高齢で健康状態も不安定になった自国民を逮捕・起訴するというのは、そうそう簡単にできることではありません。つまり、ドイツは戦争に関係するあらゆる行為はすべてナチスの責任とする代わりに、その部分に関しては徹底して追求する姿勢を貫いたわけです。

 国家としての責任を回避し、あらゆる行為をナチスに帰すというやり方については、一部から批判の声も出ています。しかし、ドイツのこうした姿勢によって、各国から無制限に戦争賠償を要求されるという事態を回避することに成功しました。有名なワイツゼッカー元大統領による「過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目となる」という名演説も、こうした文脈の中で理解した方がよさそうです。ギリシャの要求に呼応してドイツの戦後問題を追及しようという声は今のところ上がっていません。

 ドイツがこのように、自国に有利な形で戦後問題を終結させることができたのは、ドイツの政治家にはリアリストが多く、したたかな交渉力を持っていることが大きく影響していると考えられます。当然、その背後には欧州経済におけるドイツの産業面・金融面での圧倒的な支配力があることも忘れてはならないでしょう。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/1/27(水) 3:18
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