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意外に重要な「FF車」のリアサスペンション 進歩の変遷に見るクルマのあり方

2015/3/1(日) 19:00配信

THE PAGE

 いまや小型中型の実用車のほとんどがFFレイアウトだ。いまさら説明する必要もないかもしれないが、「FF」とはフロントエンジン、フロントドライブのことだ。

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 エンジンは一般的にフロントに横置きされ、前輪にオーバーハングして搭載される。エンジンと隣合わせに置かれたトランスミッションによって減速された出力は、トランスミッションに組み込まれたデファレンシャルギアで2分割され、ドライブシャフトを介してタイヤへ伝えられる。フロントタイヤは当然のごとく、舵を切る役割も与えられているから、クルマの仕事のほとんどは前輪が行うことになる。ざっくり言えば、駆動も舵とりも前輪が行う。言ってみればリアタイヤはただ転がってくれさえすればいいことになる。

 しかし実はFF車のポテンシャルのキーはリアタイヤのグリップが握っているのだ。そしてそれが分かるのはずっと後のことだ。まずはフロントの問題を片付けるまでリアサスペンションに向き合うところまで進まなかったのだ。

日本初のFF車は1955年の「スズライト」

 日本で最初のFF車は1955年にデビューしたスズキの軽自動車、スズライトだ。小型車にとってパッケージ効率を高めることは万国共通で重要だ。ところがFF車の場合、舵を切る都合上、動力を伝えながらタイヤを動かさなければならない。これを無理なく実現できる等速ジョイントが発明されるまではFFはかなりハードルの高いメカニズムだった。

 後にホンダがN360やライフと言った軽自動車でFFを普及させるが、それらの継ぎ手はユニバーサルジョイントで、たった31馬力の力を伝えるだけで3000キロ毎のオーバーホールが必要と言う手間のかかるものだった。

 継ぎ手の問題点はいくつかある。前述の耐久性も大きな問題だが、もうひとつの重大な欠点があった。動力を伝えながら舵を切る角度が大きくなる ── つまり舵角が大きくなると、シャフトが1回転回る途中で速度の不均衡が出るのだ。これが振動となってステアリングにキックバックを与える。その回転むらでハンドルが急に重くなったり軽くなったりする。これに左右のシャフトの角度差によって、アクセルを踏んだ途端勝手にハンドルが回ろうとするトルクステアが加わる。しかも当時のクルマにはパワステなどというものはないから、全てダイレクトに伝わって来る。結果として舵を切った状態 ── コーナーリング中に、ステアリング系が勝手にじたばたして挙動が不安定になるわけだ。

 そのため当時の小型車は、RR(リアエンジン、リアドライブ)派とFF派に分かれ、時代を遡れば遡るほどRRが優勢だった。量産車でFFのジョイントの問題を最初に解決したのはBMC(後のローバー)ミニだ。それまでのユニバーサルジョイントに代わって、複数のボールベアリングを介して動力を伝える等速ジョイント(ツェッパジョイント)を採用したことによって、FF車の新時代を拓いた。

 ミニはこれ以外にも横置きFFによるコンパクトなレイアウトを構築したことでも自動車史に多大な貢献を残した。ミニのパワートレインはエンジンがミッションの上に乗る二階建て方式(イシゴニス式)レイアウトだったが、フィアット128でエンジンとミッションを隣合わせに並べるジアコーサ式レイアウトが考案され、この2台の傑作車が現在のFF乗用車の源流になっていくのだ。

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最終更新:2016/2/6(土) 2:53
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