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〈川崎・中1殺害事件〉 それでも少年法が必要な理由とは? 弁護士・松原拓郎

2015/3/11(水) 18:00配信

THE PAGE

 川崎市で中学1年生の上村遼太さんが殺害された事件で、殺人容疑で逮捕された少年(18)の実名と顔写真を「週刊新潮」が掲載した。日本弁護士連合会は「少年法に反する事態」として抗議した。自民党の稲田朋美政調会長は、「犯罪を予防する観点から今の少年法でよいのか」と少年法の改正の必要性に言及、対象年齢の20歳から18歳への引き下げ、実名報道を禁じる規制を見直す可能性を示した。少年事件に詳しい弁護士の松原拓郎氏は、「今でも、少年法には十分な意味がある」と語る。そもそも、少年法の狙いと意義とは何なのか。松原氏に寄稿してもらった。

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少年法は改正すべきか?

 川崎市で起きた痛ましい少年事件を契機に、少年法を改正すべきとの意見を多く目にします。その論調は、少年犯罪が増加、凶悪化している、そこで抑止のために少年法の改正が必要だ、というものと思われます。具体的には、(1)厳罰化/少年法適用年齢の引き下げ、(2)実名報道、の問題が主に議論されているようです。そこで今回は、この問題について、多くの少年事件にかかわってきた弁護士としての立場から、意見を述べてみたいと思います。

少年犯罪は増加しているのか/凶悪化しているのか

 平成25年版「犯罪白書」の統計をみると、一般刑法犯(刑法犯-自動車運転過失致死傷等)については、成人人口比はそれほど変わらないのですが、少年人口比ははっきりと減少しています。その他、「少年犯罪の数の増加」と矛盾する統計資料は枚挙に暇がありません。少年犯罪が増加しているわけではないことは明らかです。

 また、凶悪化しているとの評価もできません。凶悪化は、この「犯罪白書」を含め、統計資料からは確認できないのです。悲しいことではありますが、殺人事件などの、少年によるいわゆる「凶悪事件」は以前から存在していました。またこれら「凶悪事件」は、昔のほうが数としても多く、最近増加したわけでもないのです。また、「凶悪化」は多分に「感覚」「印象」によるもので、その感覚は、マスコミ報道やインターネットの影響を大きく受けています(皮肉にも、この記事もインターネット配信です)。

 ここに、いわゆる「体感治安」の悪化といわれる問題があります。大きな影響を与えているのが、マスコミ、そして、インターネットを通じて情報が一気に拡散するという現代社会の特性でしょう。池上彰氏がこう語っています。「東京の局であっても、北海道でも福岡でも殺人事件があれば取り上げて、全国ニュースになってしまう。それを見たら『こんなに治安が悪くなっているのか』と思いますよね。少年事件は大人の事件より衝撃的だから、さらに大きな扱いになります。(中略)だから、少年事件が頻繁に起こっているような印象を受ける」(日系ビジネスONLINE、2015年3月6日)。まさにそのとおりだと思います。

 制度を議論する際は、せっかくうまく行っている制度を壊さないためにも、少なくとも、マスコミ報道の影響を受けたイメージに基づいたものではなく、正確な事実認識を元に議論をする必要があります。

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最終更新:2016/2/15(月) 2:48
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