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グーグルが原発に食指、ITが原子力に関心を示す理由とは?

2015/3/19(木) 7:00配信

THE PAGE

 グーグルが原子力発電に興味を持っているという報道が出ています。あくまで関心を示している段階のようですが、あらゆる分野に絶大な影響力を持つ会社であるだけに、その動向が注目されます。

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 マサチューセッツ工科大学(MIT)教授で原子力工学が専門のリチャード・レスター教授は、日本のメディアに対して、グーグルの社員がレスター教授のもとを訪れ、研究内容に関する情報提供を受けたことを明らかにしました。レスター教授は、原子力の専門家であるとともに、各国のイノベーションや競争力に関する造詣も深く、1980年代には、日本の製造業の急成長と米国の製造業の衰退を指摘した『メイド・イン・アメリカ』がベストセラーとなっています。

 グーグルは世界中で無数のデータセンターを運営しており、数百万台のサーバーを稼働させているともいわれています。このため、同社はエネルギー効率について高い関心を寄せており、クリーンなエネルギー源に対する研究投資を行ってきました。同教授は「原発はCO2を排出しないため環境に優しく、大量生産が可能な安定的なエネルギー源である」と述べており、同社が化石燃料に代わるエネルギー源として、再生可能エネルギーだけでなく、原発も選択肢の一つとして検討していることが明らかとなったわけです。

 ただ原子力発電についてはいろいろな意味で逆風が吹いています。福島第一原発の事故から安全性の問題を指摘する声はより大きくなっていますし、環境問題の観点から再生可能エネルギーに軸足を移し、脱原発を進めるドイツのような国も出てきました。シェールガス・ブームに沸く米国ではコスト的に原子力の魅力が薄れてきており、新規の原発建設は進んでいません。

 一方、新しい動きもあります。原子力は最先端の科学技術というイメージが持たれていますが、現在の標準的な軽水炉が開発されて以後、数十年間、目立ったイノベーションがありませんでした。安全性を重視した新しい構造の原子炉を開発しようという動きが出てきており、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏などは、新しい原子炉を開発するベンチャー企業に投資を行っています。

 安全性が高い小型原発が開発できれば、電力インフラに乏しい僻地や途上国でも容易にITインフラを構築できます。グーグルやゲイツ氏がこうした技術に興味を持つのは、ある意味で当然のことといえるでしょう。

 また国際政治における駆け引きという点から、中国は積極的に原子力政策を進めています。フランスの国営原子力企業であるアレバ社は、4期連続で大規模な赤字を計上し、経営危機に陥っているのですが、中国政府はアレバ社に対して巨額の出資を行う計画を立てているとの報道が出ています。

 現在の再生可能エネルギーの水準では、化石燃料の完全な代替は難しいといわれており、何らかの形で複数のエネルギーを組み合わせる方式が現実的といえます(エネルギーミックス)。日本は最悪の原発事故を起こした国ですから、原子力の扱いについてはより慎重な姿勢が求められますが、一方で、原子力分野でのグーグルの取り組みやイノベーションの進展にも注意を払っておく必要がありそうです。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/1/26(火) 4:35
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