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〈NHK会長の言動で議論に〉公共放送とは何なのか 砂川浩慶・立教大学准教授

2015/3/24(火) 17:00配信

THE PAGE

 NHKの籾井勝人会長の言動が話題となっている。最近では、籾井会長が私用のゴルフで使ったハイヤーの代金が、業務に伴う支出として処理されていたことが「公私混同だ」と指摘されている。そもそも、NHKとはどんな組織なのか。そして日本における公共放送とは何なのか。放送法や公共放送のあり方に詳しい、砂川浩慶・立教大学社会学部メディア社会学科准教授に寄稿してもらった。

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 籾井勝人NHK会長の言動をめぐり、改めて公共放送NHKの役割が問われている。公共放送とは何かを考えてみたい。

 世界の放送を形態別に整理すると、国営放送、公共放送、商業放送に大別される。国営放送は国家が放送局を運営するもので、アメリカのVOA(Voice of America)、中国の中央電子台(CCTV:China Central Television)、北朝鮮の朝鮮中央テレビなど対外的な広報機関として国際放送であることが多い。国営放送は政府のプロパカンダ(広報・宣伝)機関となり、“権力監視”というメディアの役割を果たせないため、民主主義国家では国内放送において国営放送方式を取ることはほとんどみられない。

 公共放送については、イギリスの受信許可料、日本の受信料など特権的な財源を認める一方、役割を制度化しているケースが多い。各国の歴史的経緯によって放送はそれぞれの異なる発展を遂げており、一概にはいえないが、公共・国営放送中心のヨーロッパ・アジア、商業放送中心のアメリカの中で、公共放送と商業放送(民間放送)が併存しているのが日本の特徴である。

受信料の支払いは義務なのか

 NHK(日本放送協会)は日本で唯一の公共放送であり、法人格は特殊法人である。設立に根拠となる法を持つ法人を特殊法人と呼ぶが、NHKは放送法を根拠としている。戦前の社団法人 日本放送協会を引き継ぎ、放送法などが施行された1951年6月1日に発足した。

 放送法第15条は、NHKの目的として「公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送を行うとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放送及び協会国際衛星放送を行うことを目的とする」と記載している。つまり、「豊かで、かつ、良い放送番組」を全国に「あまねく」届け、放送の「進歩発達」に必要な調査・研究を行い、テレビ・ラジオの国際放送を行う公共放送である。

 2015年度予算6,831億円は世界最大規模。うち96.7%の6,608億円が受信料収入、残り3.3%の223億円は国からの国際放送関係交付金(35.4億円)や関連団体からの副次収入(81.3億円)など。

 受信料は放送法第64条で「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」と規定されている。契約は義務付けているが、支払いは義務付けていないため、「契約義務制」と呼ばれる。その契約である「受信規約」で支払い義務などが規定されている。個人単位ではなく世帯ごとの契約である。放送法上、契約義務制に罰則規定はなく、罰金刑を持つイギリスBBCの受信許可料制とは異なる。しかしながら、NHKでは受信料未払いの契約者に対する簡易裁判所への支払督促の申立て(2013年度末累計で5,573件)などを進めており、2017年度までの経営計画では現在77%の支払率を80%に引き上げることを目標としている。

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最終更新:2016/2/6(土) 4:55
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