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フィリピン沖で発見 戦艦「武蔵」はだれのもの?

2015/3/30(月) 17:00配信

THE PAGE

 3月2日にマイクロソフト共同創業者で資産家のポール・アレン氏がフィリピン・シブヤン海の海底約1000mで戦艦「武蔵」を発見したというニュースは大きく報じられました。史上最大の戦艦「大和」型2番艦の「武蔵」は米空母艦載機の攻撃を受けて撃沈され、潮流の速いシブヤン海では正確な沈没地点がこれまで分からず「『武蔵』は沈んだが浮力が釣り合って海中を今も漂い続けているのだ」という伝説が生まれていたほどでした。

【アーカイブ動画】第二次世界大戦で沈没した戦艦「武蔵」の様子

 これまで1番艦「大和」はアニメ「宇宙戦艦ヤマト」の影響で広く知られている一方で、2番艦「武蔵」の知名度は低いものでしたが、今はちょうど日本では軍艦を擬人化したブラウザゲーム「艦これ」が流行中で、戦艦「武蔵」のことを知っている人が大勢いたのです。そんな最中に「武蔵」発見の一報は熱烈な歓迎をもって迎えられました。

 しかし発見したとはいっても「武蔵」の船体は引き裂かれている上に、深さ1000mの海底では大規模な引き揚げは物理的に不可能です。引き揚げができるとしても一部の部品や、発見できれば乗組員の遺骨を回収するという作業になります。遺族の中には沈没船を墓標と捉えて一部であっても引き揚げに反対する声もあり、意向を尊重しつつ一部引き揚げが実施できたとしても、今度は「武蔵」の所有権という問題が出てきます。

 基本的には沈んだ軍艦は所属していた国の所有物になるのですが、日本は太平洋戦争の敗戦後に進出した現地から撤収する際に資産を全て放棄しているので、沈没船もこれに該当するという捉え方があります。また戦争で生じた多数の軍艦と輸送船の沈没船は航路を塞ぎ、講和条約で撤去する費用と人員を日本が提供することを求められました。戦後賠償として各国と協定が結ばれ、沈没船は日本の責任として引き揚げられ解体し、得た屑鉄を売った代金は賠償金として納められました。

 この引き揚げ作業は完了済みで戦後賠償も払い終えているので今この協定を持ち出しても効力はありませんが、しかしこういった経緯がある以上、戦艦「武蔵」は日本の所有物だとフィリピン政府に強く言うことはできないのです。フィリピンは太平洋戦争最大の激戦地で、最も多数の艦船が沈んだ場所なのです。

 また武蔵の沈没地点は公表されていないのですがフィリピン領海である可能性が高く、所有権はともかくとして管理権はフィリピン政府にあります。武蔵の備品を引き揚げた際の取り扱いは発見者のアレン氏とフィリピン政府、日本政府が協議することになるでしょう。揉めた場合は裁判になりますが、日本とフィリピンの関係は良好で資産家のアレン氏は強く所有権を主張しないと表明済みなので、三者が納得のいく結論が出ると期待します。

(JSF/軍事ブロガー)

最終更新:2016/2/3(水) 2:55
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