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世界の空に挑む ── ホンダジェットの成算は?

2015/5/7(木) 16:00配信

THE PAGE

成功裏に終えた国内各地での一般展示イベント

 米国を本拠地として開発しているホンダ エアクラフトカンパニーの小型機「ホンダジェット」は、ワールドツアーの一環で4月23日に来日。GW中に仙台、熊本、神戸、岡山、成田で初披露イベント(デモ飛行)を行い、5月19日からスイスのジュネーブで開催される航空ショーに出展後、ヨーロッパ各地を巡る予定です。

 実機を見た人の多くは、「小さくてシルエットがスピード感ある」「エンジン音が静かで驚いた」と印象を語っています。機体はビジネスジェット機の中で最も小型で7人乗り、「プライベート(自家用)ジェット」と呼ぶのが相応しいでしょう。

 ホンダジェットは現時点で欧米向けに製造、販売を開始しており、既に100機以上を受注しています。日本を含むアジアでの販路拡大については、今後の状況を見極めながら検討していくことになりそうです。

 ホンダのコンセプトは、同社がこれまでに送り出してきたバイクや自動車のように、革新的な「乗り物」を提供することで、世界のメディアは「遂に飛行機の販売を開始」と取り上げています。エンジンを主翼上面にのせた独創的なデザインに注目が集まり、燃費がよく、静粛性、航続性、快適性など、小型でありながらバランスのいい性能と品質には目を見張るものがあります。

 航空機は通常、機体メーカーと搭載するエンジンメーカーが異なる例がほとんどですが、ホンダジェットの場合はエンジンの開発にも携わっており、自動車の開発作業に近いと考えられます。機体全体が「ホンダ製」であることにより、ブランドの価値と信頼性は高まるでしょう。

 良いものを素直に認めるアメリカにおいて評価され、そして世界に進出、日本の市場も模索するというプロセスは、競争力をつけながら「成功への道のり」を着実に歩んでいると言えるのではないでしょうか。

ホンダジェットは世界で成功するのか

 本拠地アメリカでは「自家用機」が多く飛行しています。周囲にパイロットの資格を持つ人も多く、広大な土地ゆえ、航空の文化が根付いています。当然ビジネスジェット機の市場は激戦区で、ライバルとなり得るセスナ社(アメリカ)やエンブラエル社(ブラジル)などの航空機が大きなシェアを占めています。

 しかしながら、ホンダブランドの注目度は高く、量産機の製造が始まったばかりにもかかわらず、顧客からの問い合わせは多く、航空ショー(見本市)でも手応えがあると言います。

 高級車に乗ることがアメリカンドリームだった時代もありましたが、今や燃費のいい大衆車が多く走っています。性能のいい日本車は誰もが認めるところでしょう。「高級車ではなく、優れた大衆車」として、ホンダの車が世界で受け入れられているのと同様の思考なのかもしれません。ビジネス機の需要が拡大しているヨーロッパでも、近距離の移動ではコストパフォーマンスの高い航空機となり得ます。

 もちろん1機450万ドル(約5億4千万円)という価格は、他のライバル機と比べて極端に安いわけではないので、販売機数を増やして業績を伸ばすには、品質だけでなくマーケティングとカスタマーサポートが重要な鍵となります。

 ホンダジェットを「どうして日本で売らないのか」という疑問も多く聞かれますが、日本では現在、民間のビジネスジェット機が約30機しか存在しません。一方、アメリカでは1万2千機以上が登録されています。日本における小型ジェット機の市場は、あまりにも小さいのです。

 とは言え、「車を扱うかのように気軽にジェット機で移動できる世界」を実現することは、興味深く、かつ挑戦的ではないでしょうか。

 ホンダジェットが成功するか否か、すぐに結果が出るものではありません。10年後、20年後、どのように評価され、何機が世界中を飛び回っているのか。航空に携わる大勢の関係者が期待に胸を膨らませているところです。

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坪田敦史(つぼた・あつし)
航空ジャーナリスト。パイロットの資格を保有し、国内外で航空機の運航経験を持つ。旅客機から軍用機まで航空業界全般を取材し、記事執筆・写真撮影を20年以上続ける。著書に『わかりやすい旅客機の基礎知識』『ヘリコプターの最新知識』など。テレビ、新聞でもコメンテーターとして活躍。

最終更新:2016/2/11(木) 4:45
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