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ハイブリッドだけじゃダメ?「マイルドHV」はなぜ必要か

2015/5/18(月) 6:00配信

THE PAGE

 さて、今回はちょっと硬い話から始まる。クルマの世界は今すべからく「エコ」なのだけれど「そもそも何のためのエコなんだっけ?」というお話をおさらいしておかないと「マイルドハイブリッド」の意味がわからないからだ。

 エコロジーとは本来生態学のことだが、われわれが普段使っている「エコ」とは「地球に優しい」という意味だと言って差し支えないだろう。そのエコを実現するために今すぐ必要なものは何なのかを考えるのが今回のテーマだ。

明治時代に始まった日本の環境問題

 日本における環境問題は、古くは明治期の足尾鉱山事件やイタイイタイ病などから始まり、1960年代には水俣病の拡大や四日市ぜんそくなど、工場の環境汚染が社会的事件に発展した。おそらく普通の人が普通に「公害」という単語を認識したのはこの頃のことだろう。つまり1970年代以前の環境問題とは主に鉱工業の排出する排水や排気の問題だった。

 1970年代に入ると、東京でも光化学スモッグが発生し、クルマの排気ガスが新たな焦点となる。すでに1960年代から公害の一因子として自動車の排ガス規制は始まっていたが、この頃から規制が一気に強まり、クルマの性能に多大な影響を及ぼすようになった。

 この当時の規制で重視されたのは一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)窒素酸化物(NOx)など、直接あるいは光化学スモッグの原因となって人体に有害なガスだった。つまり1980年代までの環境問題とは、増え続ける自動車が撒き散らす有毒排気ガスの問題だった。

 1973年にオイルショックが起きたことで、省エネルギーが叫ばれ始めたが、それはあくまでも石油資源の高騰や枯渇を心配したもので、現在の環境問題の主題となっているCO2削減とは文脈が違う。

 日本の自動車メーカーは1980年頃までに排ガス規制の目標を達成し、日本車は他国のクルマに大差をつけて、世界で最も進んだ環境性能を獲得した。

「公害」から「省資源」へ変わるトレンド

 しかし、1990年代になると今度は国際的に「地球温暖化」という新たな問題が提起され、温室効果ガスに注目が集まり始める。ここから地球温暖化抑止のための「サステナビリティ」というキーワードが急浮上して、現在の流れに繋がってくるのだ。

 1997年には地球温暖化防止京都会議(COP3)が日本で開催され、京都議定書が採択された。ここで初めて温室効果ガスの具体的な削減目標が設定されたのだ。

 もちろん、それ以前に日本が先行していた有害ガス対策は決しておろそかにすべき問題ではないのだが、これまでの経緯から、日本では環境問題があまりに「公害」にフォーカスされ過ぎており、世界の環境問題の中心が「対人」から「対地球」に変わり、温暖化防止を目的とするCO2やフロンなどの温室効果ガスに移りつつあることを甘く見ていた面があった。環境問題で先行したがゆえのウサギとカメ状態だったように思う。そのため、日本の常識である「環境を汚さない」と違う常識「資源を減らさない」にシフトするのに時間がかかったのである。

 しかし、21世紀が近づくと、われわれが長くクルマという文明の利器の恩恵に与っていくためには、CO2を抑制しないとどうにもならないということがはっきり見えてきたのである。CO2を減らすということは燃料を燃やさないということだ。つまり低燃費を押し進めればCO2は削減できる。

 2005年のことだから今からちょうど10年前、タイヤメーカーのミシュランが主催する大掛かりなエコ・イベントに同行取材した。筆者はこの時、初めて燃料電池車や新世代ディーゼルなどのいわゆる「クリーンカー」に乗り、世界各国から集まった人々の公演を聞いた。

 こうして分かったようなことを書いている筆者だが、当時は「環境なんて意識高い系の人のもの」と思っていたのだからお恥ずかしい。この取材を通じてエコカーについてちゃんと勉強しておかないといけないと思い知らされたのだ。

 それから10年。気がつくとこの連載のほとんどはエコか環境対策がテーマになっている。今自動車メーカーが取り組んでいる技術の方向性は、おおむねエコと環境に関係しているので、クルマの原稿を書くと自然とエコと環境の話ばかりすることになっている。

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最終更新:2016/2/21(日) 2:55
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