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自民党がマイスター制度の創設を検討、なぜ今ごろ?

2015/5/26(火) 8:38配信

THE PAGE

 自民党が、高度な職人を育成するドイツの「マイスター」制度を参考に、新しい「巨匠制度(仮称)」の創設を検討しています。

 日本には技能検定制度というものがありますが、認知度が低く、就労に必須の資格というわけではないため、あまり機能していません。新しい制度によって職人の地位向上を図り、待遇改善や後継者不足の解消につなげることが狙いです。

 ただ、マイスター制度は、過去、日本において何度も議論されてきたという経緯があります。実際に法制化を行うのであれば、形だけの導入にならないよう、幅広い議論が必要でしょう。

 ドイツでは、学校教育と職業教育が一体となっており、高度な職人の養成が正式なカリキュラムとなっています。マイスターになるためには、職業訓練学校での教育や見習い経験などを経て、資格試験にパスする必要があります。マイスターの資格がないと、従事できない仕事もあるため、社会的な信用度も高いといわれています。

 こうしたマイスター制度には良い面と悪い面があり、ドイツでもこの制度をめぐっては以前から議論となってきました。日本は中学卒業まで全員が同じカリキュラムで勉強しますが、ドイツでは、小学校の高学年くらいから、高等教育を受けるコースを選択する人と、実務教育を受ける人を選択する人に振り分けられます。マイスター制度が維持できているのは、早い段階から進路を振り分ける制度があればこそなのですが、将来の可能性を限定してしまうという点から否定的な意見もあります。またドイツのマイスター制度は、ドイツだけのものであり、EUには適用されないことから、制度の見直しを求める声も出ているようです。

 1980年代、日本の製造業が世界トップだった時代には、ドイツのマイスター制度を日本にも取り入れようという動きがある一方、否定的な意見も目立っていました。ドイツでは、マイスターの職業が利権化し、工場の自動化に対して頑なに反対するという出来事がありました。日本にはマイスター制度がないため、工場の自動化を進めやすく、その分、ドイツよりも先行しているのだという意見もあったくらいです。

 しかし、約30年が経過し、日本の製造業の地位は大幅に低下。現在では製造業大国の地位は再びドイツに取って代わられています。しかもドイツは国をあげて次世代の工業スタンダードである、インダストリー4.0を推進しています。これは物作りのノウハウをIT化し、職人に依存せず、高度な物作りができるようにしようという野心的な試みです。このようなタイミングで、ドイツのマイスター制度が日本で再び議論されているというのは、少々皮肉な現象といってよいでしょう。


(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/2/12(金) 4:34
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