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現実的な提言なのか? 首都圏高齢者は地方に移住すべし

2015/6/9(火) 7:00配信

THE PAGE

 首都圏に住む高齢者を地方に移住させるという民間有識者会議の提言が話題となっています。高齢化対策と地方創生の両立を狙おうというものですが、実現可能性はあるのでしょうか。

 提言を行ったのは、民間有識者で構成する日本創成会議です。日本創成会議は、商工会議所の加入企業などで構成するシンクタンク「日本生産性本部」を母体としており、建設官僚出身で元総務大臣である増田寛也氏が座長を務めています。昨年は、出生率を上げたとしても多数の自治体が人口減少で消滅するというショッキングな報告書を公表し話題となりました。

 提言では、東京を中心とする首都圏において、75歳以上の高齢者が今後10年で175万人増えると推計しています。これまでは地方の高齢化が進んでいましたが、今後は急速に首都圏での高齢化が進んでくるというわけです。しかも高齢者の増え方は首都圏各地域で一律というわけではありません。東京の中心部は、周辺地域から人が集まっているので、高齢化のスピードは緩やかです。しかし、東京の周辺部は、中心部に比べて高齢化が激しくなると予想されています。郊外のニュータウンに住む人の年齢層が偏っていることや、介護施設の立地が地価の安い周辺地域に集中していることが原因です。

 最終的には、首都圏全域で高齢者向け施設の数が足りなくなるという事態が予想されますが、提言では東京中心部に介護施設を多数建設することには弊害が多いと指摘しています。その理由は、東京中心部にたくさん介護施設を作ると、今度は、大量の介護職員が必要となり、地方から東京への人口流出が加速してしまうというものです。

 こうした状況に総合的に対処するためには、受け入れ余力の大きい地方に、首都圏の高齢者を移住させる必要があるというのが提言の主な内容です。具体的には、釧路市や福岡市、鳥取市などが移住先候補として提示されています。

 しかし、この提言に対しては異論も出ているようです。東京都の舛添知事は「首都圏は(介護施設が)足りないから移住しろというのは、ちょっと乱暴」であるとして、もう少し議論を深めることが必要であると発言しました。また「推奨している都市の実態をどこまで知っているのか」とも述べています。

 確かに数字上は地方都市の介護施設には余裕があるのですが、介護職員を確保できないことから、施設を稼働できないだけというケースは少なくありません。現実にはみかけ上の数字ほど介護施設が余っていない可能性があるわけです。また高齢者ほど長年住み慣れた地域を離れたくないと考える傾向が強いですし、住宅ローンで家を買ってしまった人は経済的理由で動きにくいという状況もあるでしょう。多くの高齢者を移住させるのはそう簡単なことではなさそうです。


(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/2/12(金) 2:41
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