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<インド>守り神の亡骸 ── 高橋邦典フォト・ジャーナル

2015/6/13(土) 10:00配信

THE PAGE

 ミイラ化した遺体が横たわるガラスの棺に、一人の男性がじっと額を押し付け、祈りを唱えていた。棺のなかの遺体は、聖フランシスコ・ザビエル。歴史の教科書にもでてくる、日本人にとっても馴染み深いキリスト教宣教師だ。インド南部の港町ゴアを拠点にアジアの国々で布教活動をした彼は、戦国時代の鹿児島にも上陸し、2年ほどを日本で過ごした。ゴアの教会に安置されている彼の遺体は、10年に一度だけ一般に公開されるが、今回がその第17回目になる。

 「何十年も前に初めて遺体をみたときは、体も少し大きかったような気がするが、今日はなんだか少し縮んでいたようにも感じたよ」

 ゴアに生まれ育ち、物心ついてから毎回遺体公開を見てきたゴメスさんが言った。風化するに従って遺体も縮んでいくのだろうか?長い年月にわたって実際に目にしてきた人にしか気付かないこんなコメントを聞いて、不謹慎かもしれないが、面白いな、と感心してしまう。しかし、外観がいかに変化しようとも、カトリック信者たちにとってザビエルの神聖さには変わりはない。ゴメスさんは、まるで我が父親を自慢するかのように胸をはって声をあげた。

 「ザビエルは、ゴアの守り神のようなもの。これまでゴアには大きな天災もなく、僕らは平和に暮らせてこられたんだ」

(2014年11月)

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高橋邦典 フォトジャーナリスト
宮城県仙台市生まれ。1990年に渡米。米新聞社でフォトグラファーとして勤務後、2009年よりフリーランスとしてインドに拠点を移す。アフガニスタン、イラク、リベリア、リビアなどの紛争地を取材。著書に「ぼくの見た戦争_2003年イラク」、「『あの日』のこと」(いずれもポプラ社)、「フレームズ・オブ・ライフ」(長崎出版)などがある。ワールド・プレス・フォト、POYiをはじめとして、受賞多数。

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最終更新:2015/9/24(木) 4:57
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