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TPA法案の可決でTPPが加速する理由

2015/7/2(木) 6:00配信

THE PAGE

 オバマ大統領は6月29日、米国議会で可決された大統領貿易促進権限(TPA)法案に署名し、同法案は成立しました。TPAの成立によってTPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉が一気に進む可能性が出てきたのですが、これはいったいどういうことなのでしょうか。

 米国憲法は、議会に対して外国との通商を規制する権限を与えています。同様に、議会は税金や財政上の権限も保有しています。他国と条約を結ぶ権限は大統領にありますが、通商に関する部分は議会の制約を受けることになりますし、関税が関係する部分になると、これも議会の承認が必要になってしまいます。このため、大統領(政府)は事実上、通商交渉を自由に行うことができません。仮に大統領が独断で交渉をまとめたとしても、議会はその内容について個別に修正することが可能となるため、大統領側は議会で否認されないような内容しか交渉できなくなります。今回のTPP交渉においても、米国側が強硬な主張を繰り返している背景には、議会から反発を受けないようにという配慮があったわけです。このため交渉がなかなか前に進まないという状況が続いていました。

 TPAは、議会に与えられたこれらの権限を大統領に一任する法律になります。TPAが成立すると、議会は大統領が提出した通商協定案について個別の修正を求めることはできなくなり、一定期間の審議の後、協定案全体の可否についてのみ採決を行うことになります。大統領は最終的にとりまとめた交渉内容を議会に諮るだけでよいわけですから、大胆な譲歩や交換条件の提示が可能となり、交渉の進展が期待されます。

 TPPでは、すべての品目について関税を撤廃することが基本原則ですが、日本側はコメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖を「重要5項目」とし、関税撤廃の例外にしたい方針を掲げています。これに対して米国は、すべての分野における関税撤廃を要求しており、代替となる案についても否定的だったといわれています。TPAの成立によって関税の問題が日米間で解決すれば、TPP妥結の可能性が一気に高まることになるでしょう。

 ちなみに、過去の通商交渉では、今回と同様、大統領に権限を付与する法律を作って対処するパターンが多く、1980年代に行われたGATTウルグアイラウンドでも、立法措置によって大統領主導で交渉が行われました。一連の立法措置は2007年で失効してしまったため、オバマ政権は自由に通商交渉ができない状態にありました。今回のTPA成立で米国主導の自由貿易構想が再び活発化してくるかもしれません。


(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2015/10/10(土) 3:59
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