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<インド・ブッダガヤ>聖地の物乞い ── 高橋邦典フォト・ジャーナル

2015/7/12(日) 10:00配信

THE PAGE

 仏教の聖地とはいえ、ここは世界有数の猥雑国インド。人集まる場所に物乞いあり、という定則通り、マハボディや前正覚山をはじめ、各観光スポットには何人もの物乞い達が、観光客の施し目当てにたむろしている。

 前正覚山の洞窟での苦行を捨て、中道にめざめた仏陀に乳粥を与えたのが村の少女スジャータだが、彼女を記念した寺の入口にも、6-7人の物乞い達が「常駐」していた。大都会とは違った、この田舎の「聖地」で、物乞い達はどんな扱いを受けるのか?少々興味があったのでしばし様子を眺めることにした。物乞いと一緒にするのは失礼かもしれないが、僧侶も街頭で托鉢をするわけだし、少しは同情心もあるのかなといった予想は見事に外れ、小銭を落としていく人などほとんどいない。坊さんも観光客も、地面から手を伸ばす老女や、体の不具合な物乞い達を、そこに存在などしていないかの如く完全無視だ。

 まあこんなものだろう。外国人観光客なら、いく先々で寄ってくる物乞いにはうんざりしてしまうだろうし、一人に恵んだところで、次々に伸びてくる手はきりがない。

 冷酷に聞こえるかもしれないが、この国に何年も住んでいると、物乞いを無視することにも慣れてくる。後ろめたさや罪悪感が皆無になるわけではないけれど、毎日のように目にする彼らに、同情や安易な優しさばかりで接していてはこちらの身がもたなくなってしまうのだ。

 インドは、こういう意味でも自分を試してくる国だ。

(2014年11月)

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高橋邦典 フォトジャーナリスト
宮城県仙台市生まれ。1990年に渡米。米新聞社でフォトグラファーとして勤務後、2009年よりフリーランスとしてインドに拠点を移す。アフガニスタン、イラク、リベリア、リビアなどの紛争地を取材。著書に「ぼくの見た戦争_2003年イラク」、「『あの日』のこと」(いずれもポプラ社)、「フレームズ・オブ・ライフ」(長崎出版)などがある。ワールド・プレス・フォト、POYiをはじめとして、受賞多数。

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最終更新:2015/10/13(火) 3:10
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