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<インド・ブッダガヤ>隔てる壁 ── 高橋邦典フォト・ジャーナル

2015/7/17(金) 20:00配信

THE PAGE

 夕闇のなか、ライトアップされたマハボディ寺が、木々に囲まれたその姿を静かに夜空に照らし出していた。対照的に、敷地の外には、喧騒に満ちた商店街がひろがっている。この2つの世界を分断するかのようにそびえ立つ、高いコンクリートの壁。その無機質で冷たい壁は、この場にそぐわない「異物」のように感じられた。

 この壁が建てられたのは、2013年におこった爆弾テロ事件がきっかけだ。マハボディ寺や近くにある日本寺を含め、9箇所に仕掛けられた爆弾が爆発した事件だが、幸い爆発の規模は小さく、怪我人もほとんどでなかった。当時、イスラム過激派グループの犯行だと報じられていたが、ガイドの若者が興味深いことを教えてくれた。

 町の人たちの多くは、爆弾事件には警察が絡んでいると疑っているという。事件の前、壁のある場所には何件もの店が並んでいたが、混雑解消のために、警察が店に立ち退くよう再三要請していたらしい。しかし法的権限なしに強制撤去ができない警察は、爆弾事件を演出して、安全を理由に店を移動させ壁を建設したというのだ。
 
 この話の真偽のほどはわからないし、店の撤去の真の目的もはっきりしないが、ありえない話ではないなと思った。イスラム過激派の本気の犯行なら、殺傷力の小さい爆弾など使わずに、多くの犠牲者がでていたはずだ。

 いずれにしても、仏教の聖地でさえこういうことが起こる時代。こんな壁が、人々の心さえも隔ててしまわないことを願わずにいられない。

(2014年11月)

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高橋邦典 フォトジャーナリスト
宮城県仙台市生まれ。1990年に渡米。米新聞社でフォトグラファーとして勤務後、2009年よりフリーランスとしてインドに拠点を移す。アフガニスタン、イラク、リベリア、リビアなどの紛争地を取材。著書に「ぼくの見た戦争_2003年イラク」、「『あの日』のこと」(いずれもポプラ社)、「フレームズ・オブ・ライフ」(長崎出版)などがある。ワールド・プレス・フォト、POYiをはじめとして、受賞多数。

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最終更新:2015/9/17(木) 3:53
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