ここから本文です

3列目は割り切り?トヨタ「シエンタ」 欲張りすぎないミニバン選びとは

2015/7/20(月) 15:00配信

THE PAGE

 ミニバンの設計に大きな影響を与えた歴史的分岐点が二つある。一つは1995年に始まった日本の衝突安全実証実験(JNAP)だ。これにより、車両の一番前に運転席があるいわゆるキャブオーバー型の設計が苦しくなった。以降、例えホンの少しでも鼻先にボンネット的な部分を設けて、衝突時に潰れて衝撃を吸収する「クラッシャブルゾーン」としている。ワンボックスカーが字義通りのただの四角い箱型に作れなくなったのである。

 個人宅の駐車場や住宅地の路地幅など、クルマをめぐるインフラの物理サイズはそう簡単に変わらない。だから数を売るクルマであればあるほど、衝突安全の都合でそうそう車両全長は拡張できない。となればクラッシャブルゾーンの分は従来キャビンに充てていたスペースから捻出しなくてはならない。衝突安全によって“建ぺい率”が低くなったのだ。

 もう一つ大事な流れがある。クルマにとって安全性はその誕生以来、常に求められてきたものだが、1980年代以降、安全に対する世間の興味が一層高まった。この流れによって前述の衝突安全試験が実施されたわけだが、これと歩みを同じくしてチャイルドシートもまた普及していく。そして2000年には義務付けになるのである。

 かつては乳児や幼児は親が抱いて乗車していた時代があった。それはもちろん危険極まりなく、法改正は喜ぶべきことだが、チャイルドシートが必須となれば、乳児や幼児にも大人一人分のスペースを割り当てねばならない。これにより、小さい子供のいる家庭でクルマの座席数が重要な問題になってきたのである。

 キャビンが狭くなる一方で座席数は増す必要がある。このせめぎ合いの中で苦心惨憺(くしんさんたん)しながら、3列シートのクルマが様々に生み出されていくことになったのだ。

スペースの代わりにあきらめるもの

 極論を言えば、ミニバンを買うということはスペースを買うということだ。エクストラの座席と室内空間がいらないなら誰もミニバンは選ばない。クルマ単体での「ネガ」を数えればキリなくあるからだ。

◎車両重量が重い
走る、曲がる、止まるというクルマの基本機能で不利だ。加えて燃費が悪い

◎重心が高い
走る、曲がる、止まるの不利につながり、かつ硬いばねを使わないと揺れを支えられないため、どうしても乗り心地が悪化する

◎車高が高い
タワーパーキングなどの利用が制限される

◎空力性能が悪い
前面投影面積が大きいので空気抵抗が大きく、側面積も大きいので横風安定性でも不利

◎開口部面積が大きい
スライドドアやテールゲートのせいでボディは大穴だらけ。なのに重く長い。床はフラットで低い(つまり薄い)ことが求められ、ドア開口部も床とツライチでなくてはならない。どこにも前後を縦貫する構造部材が通せず、結果的にボディ剛性を保つのが難しい

 これらのネガがあろうとも、必要な人数が乗車できなければ、ファミリーカーとして用を足さない。そこをなんとかするために自動車メーカーは頑張っている。ところがメインのユーザーは「いくらでも払うよ」という顧客層ではないから、与えられたコストの中で問題を解決しなくてはならない。ミニバンを作るのは大変なのだ。

 結論めいたことを言えば、アルファード/ヴェルファイアくらいのサイズと予算がないと、ちゃんとした3列シートミニバンは作れない。それは一面の事実なのだが、アルファードは一番安いモデルでも320万円。燃費の悪さをカバーしようとハイブリッドを選べば420万円。一番高いのは700万円超えだ。普通のサラリーマンがおいそれと出せる値段ではない。しかもサイズを見れば全長4915ミリ、全幅も1895ミリある。ベンツのEクラスセダンと比べて、全幅こそ5ミリ狭いが、全長では35ミリ長いのだ。奥さんが気軽にお買い物や子供の送迎に使う気になるとは思えない。

1/3ページ

最終更新:2016/2/22(月) 2:50
THE PAGE