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キヤノンがデジカメ生産を完全自動化、その目的は?

2015/8/13(木) 6:00配信

THE PAGE

 キヤノンが国内の工場自動化に本格的に乗り出すことになりました。自動化に関する技術開発拠点を設置し、2年程度をメドにデジタルカメラ製造の完全自動化を目指します。工場の自動化は日本の製造業にどのような影響をもたらすのでしょうか。

 同社は先月4日、国内のデジタルカメラ生産を自動化するための拠点を大分キヤノンの事業所内に新設すると発表しました。総投資額は133億円で、2016年内の稼働を目指します。ここでの成果を徐々に工場の生産ラインに導入し、2018年頃にはデジタルカメラの生産をすべて自動化し、全体で約2割のコストダウンを狙います。

 日本の製造業はここ10年の間に、生産拠点を次々と海外に移してきました。円高が進んだこともありますが、AV機器などコモディティ化してしまった製品は、全世界的に低価格化が加速するため、国内の製造では採算が合わないからです。しかし、中国をはじめとする新興国は経済成長で豊かになっており、労働者の賃金が軒並み上昇しています。一方で、日本の労働者の賃金は横ばいが続いています。このタイミングで円安が進んできたことから、場合によっては日本国内で生産しても、採算が合うケースが出てきたわけです。ただ、国内は少子高齢化で労働力が不足していますから、最小限の人員で製品を製造できる体制を構築することが重要となります。ここで工場の完全自動化が効果を発揮することになります。

 もっともキヤノンのケースは、そう単純な話ではありません。今回、自動化の対象となるデジタルカメラは完全に斜陽産業です。デジタルカメラの市場規模はスマホに押され1年間で35%も縮小しました。単価の高いレンズ交換式カメラも約17%の減少です。今後、デジタルカメラ市場が大幅に拡大する可能性は極めて低いでしょう。

 今の時代は、製造業は「地産地消」が常識ですから、もし大きな需要のある製品であれば、多少人件費が高くても現地で生産・販売した方が得ということになります。同社がわざわざ自動化を前提に生産を国内に回帰させているのは、デジタルカメラはもはや主力商品ではなくなったことを意味しています。

 もっとも同社の状況とは別に、工場の自動化は世界的な潮流になっているのも事実です。人海戦術を得意としていた中国も、すでに国をあげてロボットによる自動化に舵を切っています。iPhoneの製造で有名な鴻海精密工業は数年以内にほとんどの工程を自動化する計画を立てています。iPhoneの製造に人手が介在しなくなるのは時間の問題でしょう。

 もし全世界的に工場の自動化が進んだ場合には、どこで製造してもコストは同じということになりますから、需要地域に近いところで生産するという地産地消の流れが大きく変わることはないと考えられます。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:2016/2/14(日) 4:57
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