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<ベトナム>ジャングル蘇生の願い ── 高橋邦典フォト・ジャーナル

2015/9/13(日) 20:00配信

THE PAGE

 枯れ葉剤の後遺症に苦しむのは人間ばかりではない。死滅させられたジャングルも、いまだに元の姿を取り戻せずにいる。

フォト・ジャーナル <ベトナム・枯れ葉剤の後遺症>- 高橋邦典 第27回

 300種類もの木が生い茂り、低木から高木までの三層構造をしていた密林は、枯れ葉剤によって丸裸にされてしまった。そんな土地に現在見受けられるのは、整然と並ぶアカシアの木々だけだ。戦後、研究者たちによる何年もの試行錯誤の末、育ちが早く、害虫や病気に強いアカシアが、森林再生の第一段階として植えられることになった。それから20年以上をかけ、こつこつと手作業で植林は続けられ、30万ヘクタールの土地に植え付けがなされた。ちなみにこれは東京都の約1.5倍にあたる面積だ。アカシアがある程度育ったいま、次のステップは、ホペアやラトンといった堅木を植えること。直射日光を好まないこれらの木のために、まずアカシアの木陰を作ることが必要だったのだ。ここから次の段階までにはさらに数十年の年月がかかるだろう。森林を取り戻すというのは、なんと気の遠くなるようなプロセスだろうか。

 「戦前のようなジャングルを取り戻すのは不可能だろうね。せいぜい6-7割が限度、それも60年とか80年、いや100年かかるかもしれない」

 これまで30年以上、森林の再生にとりくんできたボイ教授が、苦笑いをしながら言った。

 「それまでには私はとっくにくたばっているから、子供や孫の世代に、ジャングルが生き返ってくれればね。それだけが私の願いさ」

(2009年6月)

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高橋邦典 フォトジャーナリスト
宮城県仙台市生まれ。1990年に渡米。米新聞社でフォトグラファーとして勤務後、2009年よりフリーランスとしてインドに拠点を移す。アフガニスタン、イラク、リベリア、リビアなどの紛争地を取材。著書に「ぼくの見た戦争_2003年イラク」、「『あの日』のこと」(いずれもポプラ社)、「フレームズ・オブ・ライフ」(長崎出版)などがある。ワールド・プレス・フォト、POYiをはじめとして、受賞多数。

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最終更新:2015/11/14(土) 2:58
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